ヤマモトチヒロのブログ

佐世保在住フリーライターです。育児日記に混じって、地元佐世保の歴史や文化、老舗や人物について取材撮影執筆した記事を掲載しています。

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バスでボスみたいなおばちゃんからいたわられる

天気が良かったので、子とバスでお出掛けしてみることにした。

もちろんはじめてである。

家が山の中腹にあるため、最寄りのバス停にはバスが一日5本しかこない。

その中で、「子連れで買い物程度ができて短い時間で帰りのバスに乗れる」条件にあうものは昼過ぎにくる1本しかない。

子が昼寝に入ってしまったので中止にしようかな思ったが、ちょうどいい時間にぱちりと目を覚ましてくれた。

外はやや風が冷たかったものの陽が温かく気持ちがいい。

バスに乗ると、乗客は人っ子ひとりいなかった。

子は身体を固定された状態でじっとするのが苦手だ。

そもそも抱っこひもが苦手だ。

動きがないとゆんゆん泣く。

なので一番振動があって高さのある後部座席に座った。

ぽつぽつと客が乗ってくる。

エリア的な特徴もあるのか、やはり全員高齢者だ。

自分一人だと、なんだか日本の行く末を案じてゲンナリしてしまうところだが、赤子と一緒にいると気にならなかった。

ポジティブの塊を持っているようなものだった。

 

ふらりと市街地で降りた。

制限時間は40分程度。

このバスを逃すと、次やってくるのは3時間後だ。

仕事に出た夫の車にチャイルドシートを乗せっぱなしだったので、家にいるお義母さんのお迎えも頼めないという状態だ。

とりあえずぱたぱたと歩く。

仕事の参考にと、公民館へ行きチラシやフリー冊子を取りまくる。

ふとその隣に、市営のこども福祉施設があることを思い出した。

堂々と入れるご身分になったことだし、せっかくだから見てみようと中へ入る。

子どもが遊べるプレイルームや授乳室などが完備されている。

多目的室などの各部屋が「みかん」や「ばなな」など、かわいいフルーツの名前になっている。

幼稚園でもそうだけど、3文字ひらがなで花やくだものの名前が付けられるのってとっても多い気がする。

あっても4文字で、5文字は見たことがない。

「まんごすちん」とかあってもよさそうだけど。

かわいくて親しみやすいのと、覚えやすいからだろうか。

 

施設で受付を済ませると、2019番と書かれた札を渡された。

登録者番号ということで、今後使うものらしい。

くじで当たったわけでもないのに、ふふ、今年のヒトって感じじゃん、と無意味に嬉しくなった。

 

授乳などを済ませていたら、あっという間に残り時間の半分を過ぎてしまった。

あわてて外に出て、スーパーへ寄って買い物をする。

ほんとうは、この近くにある洋品店ヴェニス」に行きたかった。

元気がない商店街のなかで、いきなり現れるゴージャス空間。周りの景色が無彩色にみえる。

県外から来たひとともたびたび話題になる、わたしのなかでは佐世保の名スポットの1つといってもいいぐらいの場所だ。

もちろん、佐世保という日本最西端の地方にあるからこそ価値を感じるのだということを付け加えておきたい。

店内をふらりと見て、見知った店員さんに声を掛けたかったが、とてもそんな時間はなさそうだ。

 

帰りのバスに乗り込む。

やはり乗客のほとんどは高齢者たち。

行き先が超限定される便なので、おそらく固定メンバーだろう。

それぞれが目的を果たし、買い物袋やキャリーバッグをかたわらに世間話で盛り上がっている。

席はほとんど埋まってしまっていたが、座ってじっとすると子が泣いてしまうため、立っているのはむしろ好都合だった。

しかし、優先席に座っているはずの先輩方がこぞって席を譲ろうとしてくださる。

慣れない人からの親切心に、嬉しくてくすぐったくなった。

「すみません、座ると子が泣いてみなさんにご迷惑をおかけするので」とお申し出をやんわり辞退する。

すると、ショッキングピンクのジャケットを着た高齢女性が「この席、荷物置きに使いなさいよ」と自分の前の座席をポンポンと叩いた。

おそらくこの人はこの便のボスみたいなものなんだろう。

周りが「おお…」とちいさくざわめいたからだ。

わたしは有難くそのいたわりに甘えさせてもらった。

「子どものことはようわからんけど、アンタの荷物が重そうやったけんさっ」と言い放つ彼女に、上に立つ者としての風格を感じた。

周囲の助けもあり、バスでのお出掛けはおおむね成功だったといえる。

1つずつでも良いので、子と一緒に出来ることが増えるのは嬉しいものだ。

 

子が寝返りの練習をはじめた。

お義母さんと二人で応援しながら見守る。

子は「ェアーッ」と気合を入れ半泣きになりながら頑張っていたが、スタミナ切れでぱたりと眠ってしまった。

やけに目頭が熱くなった。

 

夜は子に授乳しながら、出掛け先の夫とApple Watchで会話した。

ガジェット系妻としての歩みは着々と進みつつある。

 

 

【記事を書かせていただいてます】

PKやまもと | させぼ通信

 

 

【日常あれこれ】

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文化のチカラ2019冬号、演劇特集でした!フラットな目線で演劇が語られていて面白かったです。