つちふまずがぽかぽかする
起きたのは朝8時ころ。
子にミルクを与え、今日の予定を確認する。
お昼から、予約していた公演の声優朗読劇「フォアレーゼン」を観に行くことになっていた。
それまでに済ませなければならない用事があったので、机に向かってぱたぱたとキーボードを打つ。
夫はなぜか5時ぐらいに起きてずっと活動していたため、ちょうど活動を開始したわたしと入れ違いになる形でうつらうつらとしはじめた。
アイディア出しがうまくいかない。
これがスイスイうまくいくひとは本当に尊敬する。
多角的な視点がもっとほしい。
途中から起きてきた夫が加わり、なんとか形にすることができた。
さすが1日3時間以上しゃべって会議をまとめている人である。
小さな夫のロボットなんてものがあったら、ぜひとも脳内に住み着いてほしいものだ。
公演の時間が迫ってきたので、会場へ向かった。
重度の腐女子である妹1もこの日は誘っていたが、仕事が入ってしまい行けないという。
1人でチケット受付に並び、精算を済ませる。
周りには女の子たちがニギニギしている。とても空気がフワフワしている。
このホールでは、クラシック、ダンス、演劇など、さまざまな催しが連日行われているが、そのどれにも当てはまらない客層だということが一目瞭然だった。
わたしが中学から高校時代にいたオタクコミュニティが何千人規模になったという感じである。
すさまじい浸透圧。身体が溶けてしまいそうだ。
そんな特殊な環境にものすごく懐かしさと親近感を覚えながらも、なぜか心はザワザワしていた。
気合がみなぎっている。みなさん気合がみなぎっているのだ。
もちろんこれはコミケ(わたしが知っているのは県北会館のやつ)ではなく公演であるため、遠方から足を運んできたひとも多いのだろう。とてもお洋服に気を遣っていらっしゃる感じだ。
佐世保市街に遊びに行く服装ではないのだ。
同じ人種なんだけれど、この公演にかけた思いが、なんとなく付き合いで観に来ただけのわたしとは全然違う。
その温度差を感じながら、座席に着く。
ぐるっと会場を見渡すと、上の方まで席が埋まっているようだった。
なかには、おそらくアルカスSASEBOで公演を観ることが常となっている人(年齢がやや高め、常連臭がする)や、朗読劇というワードだけで来てしまったのかな?というようなひともいた。
ここは、おそらく九州北部のオタク女子たちが凝縮された空間なのだ。
こんな感覚ははじめてだった。
朗読劇はおもしろかった。
1人2役の声の使い分けや生の掛け合いの楽しさが伝わってきた。
チェンバロの演奏もすてきだった。
音色を聴きながら、FF9のことを考えていた。
休憩をはさんで後半は、声優たちによるトークコーナーである。
MCはとても上手で、進行はおもしろおかしく進んでいく。
質問コーナーで、声優になりたい高校演劇女子がド緊張のなか声優たちに一生懸命に思いを伝えるのを温かい目で見守った。
実は名前も知らなかった声優の男性が、美声で会場にメッセージをくれたとき、若干ときめいた。
気が付けばわたしは、周囲のファンたちと一緒になってミーハーな気持ちでワクワクしながらその時間を楽しんでしまっていたのだ。
なんと、こんなはずでは。
隣に座っていた初老の女性は、どうやらアルカスの常連かつなにかのプレーヤーのような佇まいで、わたしたちの仲間ではなかった。
しかし、しきりに「なるほど・・・なるほど」と相づちを打っていた。
そのポジションにいたかった。
「まぁ、わたしのジャンルじゃないけど、そんな魅力があるのね、ふむふむ」と言えるであろうそのクールなポジションに!
でもやはり無理だった。
NHKの番組「SWITCHインタビュー達人達」で声優が出る回を観ていたときも、つい興奮してしまいその気持ちを夫に訴えるほどだったというのに(彼はずっと無表情だった)。
この公演は1人ではなく、妹1と一緒に来たかった・・・。
共有したくてもできる相手がいないわたしの熱気が足の裏に集中してしまったようで、つちふまずがぽかぽかしていた。
帰りを夫に迎えに来てもらい、最終日だった「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」へ。
立派な一眼をぶらさげる来場者たちのあいだをベビーカーですり抜けながら、展示を楽しんだ。
帰ってビールをしこたま飲んで、次の日はやや二日酔いになった。
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