出がらしの深い美味さにあえぐ夜
子が向かう先は予測がつかない。
一旦、その目線に立ってみれば(地べたに這いつくばることになるが)わかるのだろうか。
あれこれと知恵をしぼってみるけど、今のところ子の実力行使にはかなわない。
✳︎
✳︎
✳︎
先日、カフェCorasaで開催された展覧会「第二次世界大戦 米陸軍&日本軍コレクション」を観に行った。
主催は、米海軍佐世保基地に赴任してきた現役米兵の男性だ。
歴史マニアのコレクターなのだという。
そんな彼と、佐世保観光協会でガイドとして活動しているこれまたコレクターの男性とがタッグを組み、今回の展覧会に至ったのだという。
おそらく普段は食事をするであろうテーブルスペースには、第二次世界大戦時に使用された日用品や装備品の現物やレプリカがずらりと並べられていた。
一部のものは手にとってふれるのもオッケーで、その際には白い手袋が着用必須となる。
なんでも鑑定団気分だ。
当時はテレビ局が取材に入っていて、主催のアメリカ人男性がインタビューされている。
日本語スラスラというわけにはいかないようだったので、通訳さんがついていた。
夫とお義母さんと3人で、うろうろとコレクションを眺める。
兵隊さんへの差し入れ袋。
風刺的なイラストもあってびっくり。
婦人会が使用していた?リネンのバッグ。お義母さんと「カワイイ!」で一致。
国民に支給されたガスマスクの箱。
オレンジのガスマスクのイラストとフォントが素敵である。
ひととおり見終わったタイミングで、インタビューを終えた主催者のアメリカ人男性が、コレクションを熱心に見ていたお義母さんに英語で話しかけてきた。
そこで、さっと英語で返事をするお義母さん。
アメリカ人の男性の表情がまさに「パァァッ」となったのをわたしは見逃さなかった。
その後、彼のコレクションに対する愛の語りはヒートアップ。
わたしや夫でも、「言ってることはわからないけど情熱は伝わってきた」と感想を抱いたほどだ。
好きなものへの気持ちは、言葉を超越してくるものだと再認識した。
それにしても、お義母さんのように、ああいう場で英語で立ち回れるのは本当にカッコいい。
英語を学びたい欲が少し上がった。
満足して店を出る。
小腹が空いたので、近くのローソンで適当に買ったラーメンやらおにぎりやらをモリモリと車内で食べる。
この車内ランチもしくはおやつは、3人で出掛けるときの定番となりつつある。
子は喉が渇いていたらしく、麦茶をちびちび飲んでいた。
帰りに、団地エリアのなかでとても異質な存在感を放つ黒いスーパーに立ち寄り、勢いで卸団地の直売所に行った。
わたしは子にミルクをあげるため車中で待機していると、夫とお義母さんは野菜をべらぼうに買っていた。
なかでもじゃがいもの量がすさまじかった。
安かったかららしい。
ディズニーか何かのアニメで、アメリカ空軍ネタだったろうか、飛行機の中で大量のじゃがいもの皮むきをするシーンを思い出した。
夫は、22時ごろに小休止から復活して、自家製ラー油を作り出した。
娯楽というより、もはや使命感だろうか。
夫の目には光が宿っている。
あらかじめ子を寝室に避難させ、様子を見にふたたびキッチンに戻る。
唐辛子、長ねぎ、しょうがなどをなたね油でぐらぐらと煮詰める夫。
30分ほどこんな感じだという。
すごい執念だ。
寝室に戻ると、子はスヤスヤと寝ていた。
わたしもつられてウトウトしてしまう。
遠く、夫がくしゃみを連発する音が聴こえた。
粘膜をやられているようだ。
完全に眠りの世界へ入りかけた数時間後、夫がやってきた。
眠いことは重々承知だが、感動をシェアしたいので是非階下に来てくれという。
彼の手には、なたね油で煮詰められた長ねぎとしょうがの出がらしがあった。
すっかり成分を出し尽くしてこんがりと最終形を成していた。
カラカラになった長ねぎを1つ差し出されたので齧ってみる。
ザクッとした食感とともに、何層にも広がる味わいとしびれる辛味が口の中に広がった。
思わず「深い…!!!」というセリフが口をついて出た。
食べ物の感想として、なかなか出ないワードだ。
すっかり出がらしに虜になり、ウイスキーの水割りをお供にひたすら食べまくった。
一口齧るたびに、喘ぎにも似た感動の声がもれる。
たぶん30分ぐらい、互いに感動を言い合いながらひたすら食べた。
眠気なんてどこかへ吹き飛んでいた。
美味いはエクスタシィだ!
次の日は若干胃もたれをおこしてしまったが、あの夜の、最初に口にした出がらしの味はしばらく忘れられそうにない。
【記事を書かせていただきました】
★あの赤いゾウさんのスーパー、エレナの「アノ歌」のひみつを探ってみた | させぼ通信
★三ヶ町の路地裏にある『立ち呑み処&猫雑貨屋 旅と猫と』に、猫好き女子でまったりしてきたよ【毎月22日はニャンニャンデー】 | させぼ通信
★猫にもなれちゃうふしぎなお店、有田町の『工房 FLOWERS』をたずねて | させぼ通信
★料理との"出会い"が楽しめる、佐世保の穴場スポット♪気まぐれオーナーのこだわりが光る下京町の『ご飯屋ぐーぐー』でランチ | させぼ通信
★【珍スポット】佐世保の「ゆうれい坂」って知ってる? | させぼ通信
【日常あれこれ】
こんな時間からヨウさんがラー油作り始めたネどんな美味しいのが出来上がるのかすごくワクワクするヨ!しかしやや粘膜にきたのでわたしは自室に戻ったネ子はあらかじめ避難させといたノヨ#夫めし #中華
お試しラー油
— chirolpakutiaji (@chirol1660) 2019年5月20日