チョコミント疲れを認めざるを得ない
子の昼寝は、わりと決まって10:00-11:00と15:00-17:00の2回に行われる。
人間の行動に“決まって”というものはなかなか存在しないはずだが、子がなかなか起きないときなどはつい心配になる。
わたしだって気まぐれで昼近くまで寝ていたりさっさと早い時間に寝てしまったりということがあるしそれを自分では許してしまっているというのに、子どものことになるとまた別の感覚のようである。
そんなわけで、子はたっぷり2-3時間ずつの昼寝をした。
わが家には昼寝用布団というものがない。
ブランケット程度は用意しているのだが、敷布団となると場所を取るのが面倒なうえ、子が必ずと言っていいほど外へゴロゴロとはみ出てしまうのだ。
なので子ども用プレイマットの上で寝かせているのだが、横向きないしうつ伏せが好きなので身体中にマットの跡が残る。
起きた瞬間は寝汗で濡れた髪と魚の鱗のようにへばりついたマットの跡のせいで、半魚人さながらだ。
部屋の湿気をすべて吸い込んでくれたかのような滴り具合だ。
なんだか申し訳なくなってタオルで拭いた。
いつも食事などでお邪魔させてもらっているお義母さんの部屋が模様替え状態で、テーブルなどが一時取っ払われていた。
子の背丈にあうテーブルを友人から買ってきてくれたらしい。
それを午前中かけて白くペンキ塗りをし、乾かしている最中なのだという。
とりあえず地べたに座る形でお昼ご飯を食べることになった。
「モンゴリアンスタイルね!」とお義母さんは言い、可愛い柄のランチョンマットを床に敷きはじめた。
まさにゲルの内部の写真で見たやつだ。
いただいた料理も、鶏肉のサンドイッチとピラフで異国情緒ばっちりだ。
とても美味しかった。
勢いづいて、片膝を立てて手で食べたい気持ちに駆られたがさすがに子の前ではダメだろうと自分を制した。
夜、ペンキが乾いたテーブルがお目見えとなり、さっそく子はつかまり立ちの道具として存分に活用していた。
オーバル型で長さ160cmほどあったので、上にのってしまえばもはやランウェイだ。
乾いているとはいえ、ペンキ塗りたてのテーブルはやや湿気を帯びており、
同じく湿気を帯びた子の手のひらと呼応するかのようにキュッキュと音を鳴らす。
わたしの苦手な部類の音だ。
子はそれに気がついたのか、わたしの反応を見ながら手のひらをテーブルに押し付け、ギュイギュイと音を鳴らした。
わたしが勘弁してくれ、という感じで唸ったり顔をしかめたりするのがとても面白いようだ。
だんだんとイヂワルすることを覚えてきたらしい。
ついにそれにも飽きてしまった子は、両手を振り上げてテーブルを太鼓かわりに叩いて遊んでいた。
演奏のフィナーレのように、両手を真上に突き上げていた。
その腕はとってもムチムチしていた。
夫が帰宅してから、彼に打ち明けねばならないことがあった。
チョコミントに飽きてしまったのである。
先日、再び彼からチョコミント新商品をプレゼントされたのだが、記念撮影すらも忘れてしまっていた。
さらに「冷蔵庫のものを減らさねば」と扉を開き、しぶしぶ出したチョコミントパフェアイスを1口2口食べたところで、スプーンを差したまま冷凍庫に入れてしまった。
それはもはや、チョコミントファンとはいえない行動だった。
わたしのこれまでのチョコミントとの向き合い方を見続けてくれていた夫には、このことはキチンと報告せねばならない。
「ちょっと重大な話があるんだけどさ」という話の切り出し方で本題を進めていったのだが、あとから聞くと「2人目ができたのかと思ってちょっとドキッとした」ということだった。
しかしわたしにとってはそれぐらい死活問題だったのである。
あれだけ公言しておきながら、今さら「飽きた」とどの口が言えようか。
近年のチョコミント供給過多はたしかに異常とも言えるが、それに負けてしまうだけの情熱だったのかと考えるだけで、なにやら情けなくなる。
「いや、これはやっぱり飽きたというより、距離を置こうよっていう段階かしらね!」と夫に言うと、
「それを言ったカップルは大体別れるよね」と返ってきた。
ぐうの音も出ない。
本当に好きなものって一体なんだろうとふと立ち止まって考えてみたくなった。
いまのわたしは猛烈に、しろくまくんとローストビーフが食べたくてしょうがない身体になってしまっていたのだった。
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