人物を写すならCanonだよねと言いたい
台風がおそらく通り過ぎたころ、終戦記念日の正午のサイレンが鳴った。
ちょうどそのときタブレットで作業をしていたが手を止め、1分間の黙祷をした。
タブレット画面に興味津々でずっとわたしの隣にくっついていた子が、何事かと見上げてくる。
「あなたの生きるこれからがずっと平和でありますようにってお願いしたんだよ」と言うと、子はニカッと笑って両手を挙げ、テーブルをバンバン叩いた。
この日は、お盆で佐世保に帰省していた親友と、共通の友人の家を訪ねる予定だった。
その友人は4月に子どもをもうけた。いわば平成最後のベビーである。
SNSの投稿ではかなり立派な成長っぷりを披露してくれていたので、会うのがとても楽しみだった。
この女たち3人で集まるのはおそらく初めてだ。
中学校が同じではあったが学年もクラスも違う仲だった。その後通った高校も違っていたが、唯一の共通項といえば演劇部に所属していたということだった。
高校の枠を超えた交流が盛んな時期で、よく互いに顔を合わせていた。
まさか全員で互いに自分の子をお披露目することになろうとは、当時はとても想像できなかっただろう。
台風がまだ去るの去っとらんのというタイミングだったので、なかなかお出掛けに出られず、窓の外を見てようすを伺っていた。
とりあえず家族の車が使えるようになった時間に家を出ることにした。
雨風が一層強まり、親友は「もっと早くに行けばよかったかな」と言っていたが、何時に行ってもたぶん変わらなかっただろう。
なんとか友人の家に到着したころには、少しだけ雨が弱まっていた。
たしか以前訪れたのは、友人が臨月のときだっただろうか。
平成ベビーから令和ベビーかどちらだとうという話をしていた気がする。
友人の子はとても大きく成長していて、まだ3ヶ月だというのにわが子と体重がほとんど変わらなかった。
表情もかなり豊かになっていて、親友とわたしはしばらくその笑顔に夢中になっていた。
友人はカメラを取り出した。最近購入し、愛用しているのだという。
わたしは「やはり人物を写すならCanonだよね」とまるでカメラに詳しい人であるかのように言った。
それにしても素晴らしい。
ちなみにわたしも子と一緒に写してもらったが、明治安田生命のCMみたいで感動で泣きそうになった。
ないものねだりにスイッチが入り、カメラがとてもほしくなってしまった。
母親の立場からすると、子どもの写真は撮ったり撮られたりするけれども、自分の写真はなかなか残らない。
アルバムを見返して悲しくなったりするものだが、こうして形に残してくれるのはとても嬉しい。
しかもわたしのほうから「撮って撮って!」とお願いすることなくそうしてもらえるのが有難い。
われながら結構面倒くさい人間である。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、すっかり夕飯どきまで居座ってしまったので、わたわたと帰った。
親友を実家まで送り届けたが、明日には福岡に戻らねばならないという。
お盆やすみはあっという間だった。
やはり独身の時よりフットワークは重くなってしまったが、こうしてどうにか時間を割いて会う時間はより貴重なものになった。
またの再会を伝え、その場を後にする。
この頃夫を職場へ迎えに行く際、短い時間であればお義母さんに子を見てもらえるようになった。
やはり子をチャイルドシートに乗せるという一手間がないだけで、かなり行動のテンポが速くなる。
このあいだに、子は次々と新しい遊びのバリエーションを増やしていく。
階段上りもその1つで、ロッククライミングよろしく一段一段を登っていくさまはつい拳を握りしめて応援したくなる。
同じ運動をしようと思っても、きっとスタミナ切れしてしまうことだろう。
徐々に引き締まっていく子の体を見つめながら、ふと、自分のだらしない腹部に目線を落とし、わたしはガックリうなだれてしまうのだった。
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