ヤマモトチヒロのブログ

佐世保在住フリーライターです。育児日記に混じって、地元佐世保の歴史や文化、老舗や人物について取材撮影執筆した記事を掲載しています。

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図書館には「公式キャラクター」というものがいたりする

2019年、わたしの地元にある佐世保市立図書館で公式キャラクターが誕生した。

 

名を「SABON(さぼん)」という。

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎SASEBO(させぼ)のSAと、図書(ほん)のBONで“さぼん”。港町佐世保らしいカモメのイメージ。胸元には市章、着ているセーラー服の襟は本の形。

本の妖精なので、性別はなぞらしい。

なお、後姿までバッチリ細かくデザインされている。

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リュックサックの柄は図書館のマークだ(図書館総合展ウェブサイトより引用)

こだわりがすごいし、用意周到であっぱれだとおもう。

着ぐるみ化まで待ったなしである。

 

読書と自学だけを行う場所だと思っていた図書館で公式キャラクターとは、とても意外だったわけだが、

あまりの完成度の高さとビジュアルの可愛さに「ンガワイィィィ…ギギギ!」と歯ぎしりしてしまったのは言うまでもない。

 

いやはやしかし、

公式キャラクターの誕生、とは。

児童室やお知らせ掲示板を賑わせたりしている、色紙を切り貼りして作られたウサギやクマと、果たしてどう違うというのか…。

 

などとモワモワしているわたしの耳に、佐世保市立図書館でお世話になっているベテラン司書(とても見目麗しいので、以下GL:グッドルッキングさんとする)さんの一言が入ってきた。

 

GLさん「実は全国の図書館に、チラホラいるんですよ…公式キャラクター」

 

なんだと。

それは、この目で確かめてみなくてはなるまい。

日本における八百万の神々のごとく、地域や企業などを代表するマスコットキャラクターたちが各地にはびこっているわけだが、

図書館もまた例外ではなかったということか。

 

調べていくうち、これまで抱いていた図書館のイメージを覆すかもしれないキャラクターの数々と出会うことができた。

またその過程で、図書館が新しいステージに進んでいるということも知ったのである。

 

まずは数多く存在する図書館キャラクターの、ほんの一部をご紹介したいとおもう。

 

 

個性と愛情とほんの少しの狂気が入り混じる図書館キャラクターたち

図書館といえば本!王道愛されパターン

その名のとおり、図書館=本というイメージに忠実な王道パターンである。

 

【ぶくまる/神奈川県平塚市中央図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎ふくろうの男の子。頭の上にあるのは本の形をした帽子だ。

これだ!本をアクセサリーにしているあたり、メガネをかけている理系男子ほどに安心感がある。

 

 

【らぶちゃん/島根県立大学島根県立大学短期大学部松江キャンパス図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎学生さん考案。広辞苑が3冊乗せられる大きな耳がチャームポイント。「~に」「~だに」などの出雲弁を喋る。

衣装のバリエーション含め、方言を駆使するなどかなり萌える設定だ。

広辞苑公式サイトによると、第七版の普通版で約3.3kgあるという。

ふんわりした見た目に反して、10kg近くの重みに耐えられる屈強な耳をしているのだ。

 

 

【図書五郎/慶応義塾女子高等学校】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎本の妖精。5人兄弟の末っ子で、素直になれない性格のため口がへの字になっている。寿司が好きすぎるあまりこのビジュアルである。

自身はシャリで、本がネタということか。しかしネタ=本なので、鮮度はジャンルによって違うし、美味しかったり不味かったりもするのだろうとおもう。

 

 
【としょくん/常磐大学情報メディアセンター】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎職員さんがメモ紙に10分で書き上げた渾身のキャラ。百科事典に乗り移ったつくも神。

とても貴重な妖怪枠。ゆるいビジュアルとは裏腹に、気の遠くなるような長い時を本棚で過ごしていたであろうベテランの風格を物語っている。

10分程度で彼を描きあげたという職員さんは、きっと強大な妖力に取り憑かれていたに違いない。

 

 

【本挟しお太朗/愛知淑徳中学校・高等学校

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎足の長さは自由に変えられるらしい。

ネーミングで、太郎などの「郎」ではなくあえて朗読などの「朗」がチョイスされるのも図書館キャラクターの特徴だ。

スラッとした細長い脚が魅力的なので、着ぐるみ化の際には中に入るひとの脚の形が重要となる。

 

 

本どころではない、インパクト大な特殊形態

パッと見ただけでは図書館のキャラクターとは思えない、それでいて強烈な印象を残すものを挙げてみた。

 

【語朗(かたろう)/大東市立中央図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎山で友達と相撲三昧の生活だったが、自動車図書館で図書館まで遊びに来て居つく。独特なヘアスタイルは、市花の菊。

まわしのデザインは、「おにぎり、大好きなんだな」というセリフが聞こえてきそう。

相撲よりおもしろいものを、図書館で見つけたらしい。通常の河童と同じく、頭には水がかかせないようだ。

 

 

【ランガナたん☆/田原市図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎1892年8月9日、インドに生まれる。くしゃみをするとおっさんになり、あくびをすると女の子になる。

どんな経緯でこのプロフィールが生まれたのだろうか。

考えれば考えるほど悩ましい。

「わからん、なんとか解脱して楽になりたい…はっ、これがもしやインド哲学!?」などと身体をぐねぐねさせていると、GLさんからランガナタンはインドの図書館学の父ですよ」とのご指摘をいただいた。

ランガナータン(或いはランガナタン, Shiyali Ramamrita Ranganathan, சியலி ராமாமிருத ரங்கநாதன்、1892年8月9日 - 1972年9月27日)は、インド数学者図書館学者タミル人図書館学五原則コロン分類法を制定した事で知られ、インド図書館学の父と呼ばれる。(Wikipediaより引用)

 なるほど、かなりちゃんとした設定を持ったキャラクターなのだった。

「図書館学の五原則は、学生の時に呪文のように唱えてました…」とGLさんがぽつり。

すごいぞ。一体なんなんだ。図書館学の五原則。名前だけでものすごいパワーを感じるぞ。

気になる方はぜひ調べてみてほしい。

わたしもちゃんと勉強して、おのれの根性のなさと無知に打ち震えながら、口がカラカラになるまでわたしも唱えたい。

 

 
【落花生/岡崎市立中央図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎魅惑のくびれを持つ落花生。

とてもクールで潔い。落花生。それ以外の情報は必要ない。

名前の読みが「おちはないく」ということ以外には。

 


【本のヒーロー ダクシオン/HEROES' LABO・シン】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎古来より受け継がれし「閃詩の書」を用いて、本好きの青年エイチマモルが本開(変身)した姿。人類を無知・無関心にしようとする悪の組織「インディグノ帝国」から人々を守るため、日夜戦っている。父親から鎧を受け継いだ時から失われている「左胸の1冊」を探すため、全国の図書館・書店などを巡っている。その1冊が見つかれば、真の力が発動されるらしい…。 

 あまりに素晴らしかったので、公式PR文をそのまま引用してしまった。

ちなみに武装図書剣(図書券がデザインされている)図書ガード(盾)、奥義は読み切りらしい。

受けてみたいぞ読み切り。「続きが気になる!続きを聴かせてェェーーッ!」と悶絶しながら岩場で爆発したい。

ちなみにGLさん曰く、とても良い声をしているらしい。 

 

 
【蛾のおっさん/るみづほ妄想図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎学校図書館の教育格差をよくするべく「蛾(が)んばって」いる。

聞いて驚くなかれ、蛾のおっさんだ。情報はそれだけだ。

蝶ではなくあえて蛾であるところにポリシーを感じるし、それゆえの哀愁もある。

自治体によって起こっている学校図書館の教育格差に一石を投じる、至って真剣なキャラクターである。

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図書館総合展ウェブサイトより引用

筆者の地元・佐世保にゆかりのある方が生みの親らしく、わたしはとても誇りに思う。

蛾のおっさん、プッシュしたい。

 

 

手書きのあたたかみ

キャラクターの多くは手書きのテクスチャーを色濃く残している。

その道のプロにデザインを依頼するのはごく稀で、たいていが館内外での公募(職員さんや一般市民の方の手書き)だ。

予算をあまり割くことができないという事情がうかがえるが、そのおかげかなんだか懐かしさすら内包した親しみが感じられるのは気のせいか。

 

 

猫はやはり人気モチーフ

一見、紙と相性が最悪のように見える猫だが、図書館界においても人気のモチーフだ。

ひょっとして猫好きが多いのだろうか。

スラスラっと描きやすいのかもしれないし、賢そうなイメージも採用される理由のひとつだろう。

 

 

【にゃよい/足立区立やよい図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎やよい図書館に住み着いているノラネコ。本が大好きで、頭にかぶった帽子がトレードマーク。

ひたすらかわいい。なまえもいい。

 

 
【きやにゃ、もりし/笠岡市立図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎同市出身の若手漫画家・青戸成さん(『暗殺教室』(松井優征)の公式スピンオフ作品『殺せんせーQ!』の作画担当)によるデザイン。ネーミングは、同市出身の翻訳家・森田思軒(もりた・しけん)さんと小説家・木山捷平(きやましょうへい)さんから。

漫画家先生のデザインとのことで、思わず「おぉ…」とミーハーな声が漏れてしまった。が、肝心の漫画はまだ読んだことがない。すみません。

 

 

【ねこ館長/江戸川大学総合情報図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎はたきを片手にお掃除や書架の間のゴミ拾い、重い本を抱えての配架など、猫にしては働き者。毎月シーズンにあわせたコスプレで図書館ウェブページのトップを飾っている。

「署長」や「駅長」でもおなじみの猫が、館長としても大活躍。

ファッションリーダーとして、いつも同じ衣装に甘んじることのないストイックな一面も素敵だ。

 

ううむ。

ひょっとして、猫キャラは“招き猫”的な意味合いもあるのかと思ったヤマモトです。

 

 

ところで彼らはなにをしているの?

ところで図書館キャラクターは、いったい何をしているのだろうか。

来館者をなごませるため?こども人気獲得のため?いやいやそれだけではない。

簡単にいえば、「広報係」である。

 

図書館が行なっているサービスについて、案内はされているのに見過ごされてしまいあまり認知されていないパターンは結構ある。

例えばレファレンス

館内所蔵の資料を使って、資料や情報を探すお手伝いをするというものだ。

「紅茶について詳しく書かれている本が読みたい」はもちろん、「小さい頃、海軍の宿舎に住んでいたのだけど、その場所が知りたい」といった『探偵ナイトスクープ!』的なご依頼にまで対応してくれる。

●事例詳細はこちら→子供の頃、海軍の宿舎に住んでいた。場所を知りたい。 | レファレンス協同データベース

 

特に古い情報となるとインターネットに載っていなかったりするため、利用する価値は大いにあるのだ。

内容によって時間がかかることもあるが、知りたい情報に辿り着いた喜びは手探りでお宝を探し当てたかのごとく、である。 

 

そんなわけで、これらのキャラクターたちは、そんなサービスや魅力、新着情報などについて、全力でPRを行う役割を担っているのだ。

「利用者の数が増えることも大切ですが、層の広がりも大切。伝えたい人たちに確実に情報を届けるには、守りや待ちではなく、攻めが必要なんです。そこに、みんなが注目してくれるような“相棒”がいてくれたらいいなと思って、キャラクターを作ることを提案しました」

公式キャラクター誕生は、時代を生き抜く1つの手段。

図書館は攻めの時代に突入したのだ。 

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職人気質な図書館スタッフさんが独自に設計して作成したペーパークラフト。閑静な図書館の水面下ではクレイジーな愛情とエネルギーがマグマのようにほとばしっている(佐世保市立図書館公式キャラクター「SABON」)

 

 「図書館キャラクターグランプリ」というものがある

そんななか、海底火山のような図書館関係者たちのパッションがスパーキングする、年に一回の特大イベントがある。
全国の図書館の普及や交流のため、都市計画や行政、教育、出版関係を巻き込んで行われる図書館総合展だ。

このジャンルでは最大規模のトレードショーとなる。

 

www.libraryfair.jp

 

その中の催しの1つに、「図書館キャラクターグランプリ」がある。※リンク先は2019年度のものです

www.libraryfair.jp

 

ゆるキャラだけじゃなく、図書館キャラだって頑張ってるんだぜ!”と、これらのキャラクターたちにフォーカスを当てたこの催しも今回で5回目を終えた。

今年は総勢75チームのキャラクターが出場。会場での投票によって各賞が決まる(Twiterを通じた各キャラクターへの応援も受け付けている)。※2019年度のイベントは終了しています

 

 

記念てぬぐいもある

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図書館総合展ウェブサイトより引用

こうして一堂に並べてみると圧巻だ。

まさに戦国時代ではないか。

エントリーしたキャラに応じて、毎年図柄は変わるそうだ。

【通信販売】図書館総合展公式グッズのご案内 | 図書館総合展

 

 

このように、図書館には本を読む以外の面白さがあるのだ。

ちなみに近年では、コンサートや演劇、落語など、各館独自の個性的なイベントも打ち出されている。

現在は難しいが、ぜひとも足を運んでみて欲しい。新型コロナウイルスの早い収束を願うばかりだ。

 

 

※記事の作成にご協力いただきました、図書館総合展事務局長さま、佐世保市立図書館の司書さん、誠に有難うございました!