わたしと父がこそばゆい声色で会話しているに過ぎない
とあるローソンのオーナーさんとお知り合いなのだが、先日その方がSNS上でわざわざチョコミントの新作を教えてくれた。
そのようすを見ていた夫が、さっそくローソンで新作を買いあさり帰ってきたわけだが、なにやら疲弊している様子である。
あまりにチョコミント商品の数が多すぎて、どうやら限界を迎えそうなのだという。
「負けた気がするからあまり言いたくなかったんだけど」と夫は付け加えた。
チョコミント好きな妻をいかにしてチョコミント嫌いにさせるかという裏テーマも隠されていた夫の試みは、ようやく終わりを迎えそうである。
かくいうわたしも、ブームの波で増え続けるチョコミントたちに対して愛情だけでは済まされない感情を抱きつつあった。
あなたたち、本当にそれでいいの!?と、
ハリウッド映画かなにかの、人間の都合で大量生産された悲しきAIロボットたちと向き合うヒロインのような気持ちになりつつあったのだ。
そんな、互いに抱いたことのない感情をわたしたち夫婦は抱いている。
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出生届を佐世保市役所に届けると、記念品として三川内焼の小鉢とスプーンがもらえる。
離乳食にどうぞといった風情で、白くてなめらかなフォルムが美しい。
両手におさまる小さな小鉢は、愛おしさすら感じるほどだ。
さらにスプーンに関しては、芸術品ですらある。
離乳食の味見のときにスプーンを口に含むのだが、ほんとうに口当たりがよくて気持ちがいいのである。
陶工の技術の素晴らしさを再確認する。
しかし、そんな三川内焼の子ども用食器だが、テーブルで子が離乳食を食べるようになってからは使うのが恐ろしくなってしまった。
「三川内焼は、カンカンするものじゃない!恐れ多いからやめなさい!」というのがここ最近のトレンドワードだ。
父がやってきた。
父は仕事でよく外回りをしているのだが、そのついでに孫の顔を見るため家にやってくる。
今回はフルーツゼリーと玉屋のサンドイッチをお土産に持ってきてくれた。
なぜ、と思ったが、LINEのタイムラインに投稿した玉屋の記事を読んでくれたらしい。
父はコメント欄に、犬が笑っている絵文字を1つだけぽっちりと投下していた。
普段の会話でもよく使っていた、「よろしく」と打ち込むと出てくるコーギー犬のような絵文字である。
一応、読んだよ、という意思表示だということで良いのだろうか。
玉屋のサンドイッチはものすごく強めに冷蔵を催促されたので、そそくさと冷蔵庫に入れた。
父が珍しく「コーヒーを飲みたい」と言うので、張り切って豆を挽いて淹れてみたがめちゃくちゃ薄かった。
ごめんと謝ると、父は「うん、うすかね」と言った。
普段口数が少なくどちらかというと怒っていた印象の方が強かった父が、孫を目の前にしてとろけた口調と笑顔になるのはいつ見ても慣れないものだ。
現在の彼女と出会ってからかなり角が丸くなってギモーヴみたいになったものの、ここまで顔をしわくちゃにして無防備に笑う姿ははじめてだ。
「孫ちゃん、大きくなりまちたねぇ〜、じいちゃんよ、覚えとるね〜」と、聞いてるこっちがくすぐったくなるセリフと声色をNO助走で放つ。
こちら側に少しでいいから心の準備をさせてくれ、頼む。
そしてわたしもわたしだが、ワントーン高い声で「覚えてますよ〜、おじいちゃん」と子に動作を加えながらアテレコするのである。
父は「そうねそうね、孫ちゃんに会いたくてまた来たとばい」と返事をするのだ。
間接的ではあるがこれは、わたしと父が、こそばゆい声色で会話しているだけに過ぎない。
子に対峙する人々に対してのパフォーマンスは、母親のフォローも十二分に関わってくるとおもう。
「いま寝起きだから機嫌が悪い」
「眠くてぼーっとしてるね」
という、子のリアクションがイマイチだった時に添える一言はもちろん、
「わー、笑った、嬉しそう!」
といった、子の笑顔の効果を倍にする一言も、たとえ相手の視界に母親が入っていないとしてもとても重要なのだ。
そして、
「遊んでもらってよかったね〜」
「面白いお兄ちゃんだね!」など、私から子に話しかける内容も、考える間をあまりあけずにパッと言えるものでなくてはならない。
そんな早くも、親子二人三脚な状況が生まれているのである。
私は日々、こうしたスキルを磨かねばならないのだ。
本当は黙って見守っていたいけど、そうもできないのが現実だ。
そんな不思議なやり取りをしつつ時間を過ごた。
父が子を抱きかかえ遊んでいると、徐々に子が笑顔を向け始めた。
わたしはそのたびに「よし、よし!」と気づかれないように小さなガッツポーズをした。
父は満足して帰っていった。
わたしは父の愛情をひしと感じながら、急かされて冷蔵庫に入れた玉屋サンドイッチを出して1箱全て1人で食べた。
最後の3枚あたりで絶望的になったが、なんとか奮い立たせ口にねじこんだ。
ややグロッキーになった。
そんな胃だったのもあって、夕方までダラリとして過ごしていた。
その晩、行きつけの立ち飲み屋「旅と猫と」へ子と夫と3人でゆき、
店主さんのバースデーを祝って居合わせたお客さんたちと子を中心にワイワイ喋って、良い夜を過ごした。
帰りにエレナに立ち寄り、値下げ品の乾きものやらなんやらを買った。
350mlビールを夫と2缶ずつ飲んで、すっかり酔っ払った。
子がつかまり立ちとひっくり返りと寝返りのトリプルコンボでバタバタと動いているのをしばらく見守っていたが、最終的にシャチホコのような姿勢で寝てしまった。
そのあといつの間にか寝てしまっていた。
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