ヤマモトチヒロのブログ

佐世保在住フリーライターです。育児日記に混じって、地元佐世保の歴史や文化、老舗や人物について取材撮影執筆した記事を掲載しています。

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佐世保のローカル線の風景の1つ。駅のなかにあるたこ焼き屋「駅たこ」

寒くなってきた。

たこ焼きが食べたい。

でも、たこ焼きにあまりお金を使いたくないし、わざわざ遠くに買いに行くものでもない、というのがわたしの本音だ。

コンビニのものですら高く感じるし、定食が食べられる値段で売ってあるものなど、いくら具材やボリュームにこだわっていてもいまいち食指が動かない。

しかしお祭りで気分が高まっているときに買って食べるのは、空間代込みでアリだと思っている。

そんな厳しい目線でたこ焼きをいつも見つめているわたしだが、ついつい通ってしまう、大好きなたこ焼き屋さんがある。

 

長崎県佐世保市から平戸市、さらに佐賀県伊万里市や有田町までをむすぶ日本最西端の鉄道松浦鉄道(以下MR)」

57ある駅の1つ、左石駅の構内に店を構えているのが、たこ焼き店「駅たこ」だ。

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佐世保市田原町にある、松浦鉄道西九州線の駅「左石駅」。

 

駅舎の壁には、「駅たこ」の店名が。

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うっすらとした文字の色が時間の経過を感じさせてくれる。

外観からはお店の中が見えないため、営業しているかどうかは赤いのぼりで確認だ。

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店休時、のぼりを確認せずにうっかり訪ねてしまうことがある


 駅舎にはいってすぐ右手に、2坪半ほどの小さなお店がある。

かつては待合室として利用されていたL字型のスペースを改装したのだそうだ。

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店主の森住明さん(55歳)が1人で経営している

 

左石駅は大正9年に開業したとても古い駅だ。

駅舎のあちこちには、3つの時代をまたいだ時の経過が刻み込まれている。

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お向かいには定食屋、隣にはカフェがある

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当時からずっとこの場所にあるみたい

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前はもっと広告とかバシバシで賑やかだったのかなぁ、とか

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かつては日本国有鉄道が運営していたが、昭和63年に松浦鉄道に転換。それまで有人駅だった

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1時間に2~3本の列車がやってくる

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手作り感あふれるマップ。「駅たこ」の表示が「たこ駅」になっていてクスッとくる

 かつては有人駅だったが現在は無人駅ゆえ、職員さんの姿は見えない。

 

 

うちは、たこ焼きオンリーです

驚くべきことに、このお店のメニューはなんと、

たこ焼きのみ。

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店頭にそっと置かれたメニューには、もはや「たこ焼き」の文字すらない

わたしも初めて来店したときは思わず周囲に他のメニューがないかそっと確認したが、なかった。
ドリンクすら、ないのだ。

 

こんな強気で潔いラインナップがあるだろうか。

 

ーメニュー、増やさないんですか。

率直に聞く。

やはり何度見ても、思い切りが良いメニューだなと思うのだ。

「お客さんからの要望は多いんだけどね。設備と人員的に難しいから、今のところはちょっとね」

森住さんの、これまた率直な答えが返ってきた。

 

お店がオープンしたのは平成14年。今から17年前のことだ。

ーたこ焼きだけで、17年!?2〜3年が平均寿命といわれている飲食業界で、17年!

「いやいや、そんなおおげさな。お隣の定食屋さんは30年ほど続いてるから、もっとすごいよ」と、自分のお店のことは脇に置く。

けど、本当にすごいと思うのだが。

 

 

とにかく美味いのだ

森住さんがつくる「駅たこ」のたこ焼きは、べらぼうに美味い。

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さらに6個入り250円、12個入り500円というコスパ最強な価格設定だ。

 

サイズは標準だ。具材はタコ、ネギ、天かすと至ってシンプル。

ガワはつまようじで叩くとポスポスと音がする。今すぐにかぶりつきたいほどカリッとしているし、時間が経ってもなぜか食感や風味が劣らない。不思議なのだ。

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「いや~これこれ。たまんないよね」と森住さん。はい、たまんないです

そして、中はとろけるように柔らかい。

こんなに「外はカリッと中はとろ〜り」を再現した料理があっただろうか。

少なくともわたしは、粉ものというジャンルではお目にかかったことがない。

ダシの優しい味が効いた生地をハフハフ味わっていると、小ぶりながらも存在感のあるタコに当たり、さらに旨味と食感がプラスされる。

鰹節の香りとソース、ネギのアクセントを楽しみつつ、まだ歯応えが残っているタコとともにすべてを飲み込む。うん、喉ごしが最高だ。多幸感に包まれてうっとりしてしまう。

 

…と、これまで食べてきたここのたこ焼きを回想してみた。

あぁ、早く食べたい。

 

 

駅たこ誕生は「みんなでMRを盛り上げよう!」から始まった

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駅たこ誕生のきっかけは、友人からの「一緒にMR沿線を盛り上げない?」というお誘いからだった。

当時、自営業だった森住さんは新たな事業の展開を考えていた。

もともと大好きだったスポーツ系の職種から、波に乗っていたモバイル系の自営業に転身したものの、頭打ちになりやや疲弊気味だったという。

飲食業界はこれまでとは全く畑違いの職種だったが、「みんなで楽しくやれれば」と二つ返事でOKしたという。

この商売で一儲けしてやろう、佐世保で一番になってやる、この道を極めてプロフェッショナルに、料理で人々の心を癒して笑顔に…そんな野心的なものはほぼ皆無だったそうだ。

「楽しくやれれば良いと思った。5年まで頑張ってみて、もしダメならそれまでだねって。今思えば、ホントあっさりしてたなぁ」

その後、友人たちと共同出資しあう形でお店をオープン。

“メニューはたこ焼き一本”という方向性は、最初の段階で決まっていた。

場所とコストや人件費など、とにかくコンパクトにしようと考えた結果行き着いたという。

 

ー経営に関わる方が複数いらっしゃるんですね。

「うん、けど、それぞれの事情でみんな離れていっちゃって」

ーええ!それはなんと…

「結局、僕が買い取る形でお店を続けてるんだよね。けど経営から離れても、みんなお客さんとして来てくれるんだよ(笑)」

ー1人だけで経営していくって、よく決断できましたね。

「もちろん生活がかかっているからね。それに、飲食業の楽しさもわかり始めた良いタイミングだったんだ。せっかくみんなで作ったのに、潰すのはもったいない」

 

ーお店の場所は、はじめから左石駅にターゲットを定めていたんでしょうか。

「いや、他のMRの駅にも良いなぁと思える場所はあったんだけど、他のお店とバッティングしたりしてね。たまたま取れたんで、ここにしたんだ。だってここ、僕の自宅から車で30分以上かかるんだよ。まぁまぁ大変だよ」

大変、なんだろうなとは思うのだが、これまでのいきさつを話す森住さんの様子からはありのままを丁寧に受け止めて日々を過ごす真摯さが感じられる。

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17年間、ほぼ1人で焼き台に立ってきた

ーちなみに、店名の「駅たこ」の名付け親は?

「それは、友人の1人が出した案が採用されたんだ。たくさん候補があったけど、一番シンプルでわかりやすかったからね」

ロゴマークや文字もどなたかが?

「いや、それは業者さんにリクエストしたんだ。たこ焼きのコロンと丸くて可愛いイメージで考えてもらったの。表の文字、かすれてきちゃって古さが目立つでしょ…そろそろどうにかしなきゃな〜と、思ってはいるんだけど」

 

 

たこ焼き一本でやることに期待される「並々ならぬエピソード」

ーやはり、たこ焼き一本だとかなり付加価値がつくというか、レア度が増しますよね。

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各メディアからの取材も多い

 「こんな場所で、しかもたこ焼き一本でやっていると、きっと並々ならぬこだわりやエピソードがあるんだろうということで多くのメディアさんにお声掛けいただけるんだけども、ご期待に添えないことも多くて…ははは」と苦笑い。

以前、某日本放送協会の番組から取材のオファーがあったそうだが、「特に大層なエピソードはないんです!ごめんなさい!」と出演を断ったという。

 

 

この味に行き着くまで

オープン当初からほぼ変わっていないという駅たこの味。一体どのような経緯で行き着いたのだろうか。

ーどちらかで修行を?

「たこ焼きの味は、友人たちで集まって作り上げていったよ。仕事終わりに夜な夜な集まって、ああでもない、こうでもないって。かなり舌が肥えたのが1人いて、彼のアドバイスが理想の味の主軸になってくれた。形が整ったときは、コレコレ!って歓声があがったなぁ」

 

ーたこ焼きを初めてお客さんに食べてもらったときのこと覚えてますか?

「オープン初日は表に出てチラシを配って回ったり、ひたすら焼き台に回ったりでてんてこ舞いだったからね。どんな方に召し上がっていただいたかも覚えていないけど、みんなで試行錯誤して出来上がったたこ焼きが商品として多くのお客さんの手に渡ったのはものすごく気分が高まったよ」

 

気になるたこ焼きの製法だが、生地の配合は企業秘密だ。

まろやかで風味豊かなダシの味が効いている。

はじめは地元企業のものを使用していたが、やがてその会社が倒産。その後、惚れ込んだ味を再現するまでにとても苦戦したという。

 

オープン当初から稼働しているたこ焼き機。

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脂にまみれた汚れはもはや勲章ものだ。

「とにかく外側をカリッとさせたくて。油をね、最初の頃はこの鉄板の半分くらいドバッと入れてたかな。ちょっと有名なお店のやり方を参考にしたんだけど、お客さんから油っぽすぎって言われちゃって、速攻で今の量になったよ」

そう話しながら、森住さんはまたたこ焼きを焼き始める。

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明石産のタコを投入だ。ちなみに、以前に比べ大きさは変えざるを得なくなったらしい。

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「食材の値段が高騰していくなかで、とにかく価格だけは大幅にあげたくなかったし、かといって個数も減らしたくなかった。苦肉の策だよね」

ーうーん、でも、わたしには十分大きく感じますね。タコの切り方に工夫が?

「それは、たまたま大きいのが当たっただけ!ラッキーだね。…あ、ちなみに、天かすは最近エビ入りのものを使ってるよ。ココ、グレードアップしたとこ!」

 

 

ーおおっ!それはもしや、秘伝のソース!?

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最後の仕上げとして投入される“秘伝のソース”?

「ははは、お客さんからもそう聞かれて、『そうそう!』って答えることが多いんだけどね。実は、これは醤油です。九州おなじみの甘いやつ!」

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「秘伝のソース!」と言い放つのが楽しい、そんな少年ゴコロだ


 談笑しながら15分ほどでアツアツのたこ焼きが完成した。

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じーっと出来上がるのを見ながら待つのも楽しい

 

ーちなみに、オススメの食べ方とかってあります?

「うーん、僕自身からは特に提案はないけど。カリカリを維持するためにマヨネーズをかけない人はわりといるかなぁ…あっ!常連で面白いアレンジをする方がいたよ」

なんでも、素焼きで注文(ソーストッピングなし)して、だし汁やお味噌汁に入れて味わうのだという。

ーおお、明石焼きスタイル!たこ焼き本体が美味しくないと出来ない技ですね。

「ある日そのお客さんが、『良いコト教えてあげるわよ、ウフフ』ってな感じで教えてくれたんだよ。僕自身も、そんな食べ方があったのかって勉強になったね」

うわぁ、わたしもチャレンジしてみたい。もうそろそろ食べどきかしら…いやいや、まだまだ聞きたいことがあるんですよ、ガマンガマン。

 

 

17年目にして感じた大きな変化の波

ーズバリ聞きますが、最近の客足はいかがですか。

「いやー、それが今年に入ってガクンと減っちゃって。流れがまったく読めないんだ」

17年目にして初の大ピンチ、は言い過ぎだが、一見、順風満帆に見えたたこ焼き店営業にちょっぴり向い風が吹いているようである。

「やっぱり学生さんのベクトルが変わったかなぁ。スマホやコンビニが普及して、ずいぶん様変わりしたよ」

ーお小遣いの行き先が変わっちゃったのでしょうか。あと、わたしが高校生の頃ですが、学校帰りに買い食いしてると晩ご飯が入らなくなっちゃって、親に怒られましたね。…いや、それは関係ないか。

「それはたまに高校生のお客さんから言われちゃうね。ちなみに前は部活動で遅く帰ってくる学生さんが多かったから20時まで開けてたなぁ。帰りが夜遅いし、ここ無人駅だから真っ暗だしで、なんだか心配だったの。最近はめっきりそんな学生さんも減ってしまったから、営業時間を短縮したけど。少しさびしいね」

 

こうして話している間にも、お客さんがちらほらやってくる。

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平日の夕方時だからか、買い物帰りの主婦や保育園のお迎え帰りの親子、おやつモードのお兄ちゃんなどさまざまだ。

その誰もに、森住さんは気さくに声を掛ける。

「ごめんなさい、これ、作ってからちょっと時間が経ってるんです。少しお安くしときますから。温めるときはレンジで人肌ほどがおすすめですよ」

お客さんが満足そうに帰ったのを見計らって声をかける。

ーわざわざ伝えるんですね。親切ですね。

「焼き立てが一番なんだけど、客入りによっては時間が経ったものをお渡しすることになっちゃうからね。出来るだけベストな状態で召し上がっていただきたいから。うち、保温器は置かないポリシーなんですよ」

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そういえば、それらしきものが見当たらない。

「お客さんには出来るだけ、たこ焼きを自然のままで召し上がっていただきたいから。だから冬なんかは本当に、作るタイミングが難しい」

 

その後、1人、また1人とお客さんがやってきては、小窓からたこ焼きを受け取って帰っていく。

幼稚園帰りだろうか。小さな制服を着た子どもが母親と手をつないでやってきた。常連さんらしい。

「お子さんの反応が一番正直。喜ばれた時なんかはかなり手応えを感じるな。おまけに癒されるし…」

家でおやつとして食べるのだろう、子どもは楽しそうにスキップしながら去っていった。

 

ーやはりこの場所に根付いてるとあって、愛されてますねぇ。

「いや、これだけお店が持ってるのもね、ホントにお客さまのおかげですよ。特に、オープン当初は学生さんたちの口コミが有り難かった。佐世保特有の波はあったけどね」

佐世保特有の波とは、“新しいもの好きだが飽きっぽい”という、地元人の気質を表すものだ。

特に飲食のジャンルにおいてはそれが顕著で、オープン当初は怒涛の荒波のように客が押し寄せるのだが、半年ほどですっかり引いてしまい閑古鳥が鳴く。

佐世保で商売をする際の大きな関門の1つだ。

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なんとかしてたこ焼き業界盛り上げようぜ!という学生の動きもある

「最近は僕と同じように、お客さんの流れが大きく変わったりスタッフの人員が確保できなかったりで苦戦している声を多く聞くね。けど、まだまだ楽しみにしててくださるお客さんも多いから、そして何より僕も生活していくために、頑張らなきゃって思うよ」

淀みのない森住さんの言葉は、とても自然だった。

このたこ焼き店も、ここまでくるべくして緩やかに歩んできたんだなと実感する。

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招き猫たちも応援している

「オープン当初は高校生だった学生さんが、帰省した時に家族連れで来てくれたりしてね、すごく嬉しいし、お店やってて良かったなと思う瞬間ですよ。それと同時に、常連のお客さんでご高齢の方が亡くなった知らせとか聞くととても悲しくて。時間の流れを痛感して、ふとわが身を振り返ったりするよ」

―そういえば、ご家族の方は応援してくれているんですか?

「そうだね、今はもう独立しちゃってるんだけど、離れて暮らす子どもたちがたまに食べに来てくれるよ。そして色々せびってくる(笑)」

ー「パパ、ワタシ、お店の跡を継ぐよ!」ってことにはなりませんか?

「ないね。むしろ、『よくそんなところで1日中焼き続けられるねぇ』って。感心されてるんだか呆れられてるんだか」

 

 

人件費はシビアな問題

経営が1人体制となり、繁忙期などはお手伝い程度にスタッフを雇いつつ何年も仕事をこなしてきた森住さん。

しかし安くて美味しいたこ焼きの提供のため、どうしても人件費に予算が回らなかったという。

なかなか人員を確保できない期間が続き、ワンオペ働き詰め状態だった今年の初め、ぶらりと健康診断気分で受けた人間ドックで即入院を言い渡された。

「気がつかないうちに身体がとんでもないことになってたよ」

なんとか大事には至らなかったものの、1週間ほど店を閉めることになった。

お客さんに心配をかけさせたくないと、店頭には「都合により店休」の貼り紙をした。復帰した際には心配の声も多く寄せられたが、何事もなかったかのように振る舞った。

「そういうの、表には出したくないんです」とはにかむ。

55歳にして、仕事ですっかり埋没していた健康への意識がようやく芽生えたそうだ。

愛煙家だった森住さんだったが、タバコをあっさりと辞めることができたという。

「人間、命の際まで来ちゃったらこんなもんだよね」

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ー乗り越えた人にしか言えないセリフです、それ…。

「健康食品のCMでよく見るでしょ、飲食店を営むナントカさんが大病を患って…っていうの。あれホント大袈裟じゃなくて、飲食業は、水面下がコワイ」

 ふと遠くを見つめながら森住さんが言う。

「この店を畳むときがくるとしたら、いよいよ体が動かなくなった時だね」

 

 

これまで通り、歩みを続ける 

森住さんが長年見てきた、焼き台からの風景。

「ここからの景色も当たり前のものになってきちゃったな」

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森住さんにとって日常の風景の1つ。いったいどれだけの人々が行き来してきたのだろう

ーこれからはどんなお店作りをしていきたいですか?

「そんな特別なことはしないつもりだよ。これまで通り。できれば70歳までは現役で続けたいけどね」

ーえーっと、ご主人は今55歳だから、あと15年か…。いやいや、できればわたしの子どもが大きくなったら何度でも連れていきたいので、もうあと30年はよろしく頼みますよー!

「85歳か!厳しいな!さすがに倒れる!」

駅たこはこれまで通り、たこ焼き一本で。駅を行き交う人々を眺めながら、変わらぬ時を刻んでいく。

ーよしっ、では、6個入りを2パックください!ウスターソースとしょうゆ、マヨネーズ付きで!

「はい、ありがとう」

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「カメラがあると緊張する」とおっしゃっていたが、本当に笑顔が素敵だ


 

森住さんにお礼を伝え、たこ焼きの袋をぶらさげたまま駅のホームへ行く。

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列車に乗るためではなく、たこ焼きを最高のロケーションで食べるためだ。

焼きたてでホカホカの、たこ焼きが入ったパックをさっそく開封する。

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冷えた手をじんわり温めてくれる…

ソースの香りがぶわっと押し寄せてきた。ついでに列車もやってきた。

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列車を眺めながらいただきます


ーふわ、熱い。美味い、あつい。はは。やっぱうまいなぁ。

自分用の1パックをあっさりと胃に収め、家族のために買っていたもう1パックもペロリと平らげてしまった。心の中でゴメンと謝っておく。

 

わたしは、身の丈にあった着心地の良い、それも上質な服を着ているかのような、バランスの良いこの味が大好きだ。

カリッとまあるい出来立てのたこ焼きは、ご主人の人柄のように温かく素朴で、沿線の風景とともに穏やかに流れる時間を与えてくれるのだった。

 

 

 

 

 

※お忙しい中取材にご協力いただきました、「駅たこ」店主森住さま、誠に有難うございました。

 

 

【店舗情報】

駅たこ

佐世保市田原町8-1

10:30~当日準備材料終了時(要問合)

0956-40-8539

 

 

 

 

【記事を書きました】

★全国の観光情報メディア「SPOT」にて佐世保を発信させていただきます!

佐世保バーガーの地元民おすすめと、その近くの観光名所まとめ! | SPOTtravel.spot-app.jp

 

デイリーポータルZ「自由ポータルZ」で入選しました。めちゃくちゃ嬉しいです。

明治から昭和初期を生きた「三角コレクター」徳田真寿について書く - ヤマモトチヒロのブログpkyamamoto.hatenablog.com

 

デイリーポータルZ「自由ポータルZ」もう一息でした。めちゃくちゃ嬉しいです。佐世保にお立ち寄りの際はぜひ佐世保玉屋へ!

親子三代で佐世保玉屋へ - ヤマモトチヒロのブログpkyamamoto.hatenablog.com

 

 

佐世保市のローカルメディア「させぼ通信」で書かせていただきました。

あの赤いゾウさんのスーパー、エレナの「アノ歌」のひみつを探ってみた | させぼ通信sasebo2.com

 

三ヶ町の路地裏にある『立ち呑み処&猫雑貨屋 旅と猫と』に、猫好き女子でまったりしてきたよ【毎月22日はニャンニャンデー】 | させぼ通信sasebo2.com

 

 

★好きです、西海楽園フォーエバー。 

pkyamamoto.hatenablog.com

 

 

 

いつのまにか世界がいっぱい救われていた

子が1歳になるまでのあいだに、世界が何度危機に陥り、そして救われたのかわからない。

観まくったアニメの話である。

決して子育てをサボっていたわけではない。

子の気を引かせたいときや疲れて何もしたくないときなど、NetflixやらAmazonプライムやらがとにかく大活躍してくれるのだ。

とはいえ、子の好みなんてまだ何もわからないため、片っ端から観せて反応を観察していく。

おかあさんといっしょアンパンマンドラえもん、ルルロロ、リサとガスパールピーターラビットシルバニアファミリー、ペネロペ、おさるのジョージゲゲゲの鬼太郎プリキュアセーラームーンといったラインナップだったが、

この中でちゃんと腰を据えて観てくれていたのはおさるのジョージピーターラビットゲゲゲの鬼太郎だ。

おさるのジョージは甘くてキャピキャピした雰囲気ではないし、

ピーターラビットは常にアナグマやらキツネやらフクロウから命を狙われ続けている。ピーターのパパはパイにされているし、ウサギたちは自分が食物連鎖のどの位置にいるかをちゃんと把握している。

ゲゲゲの鬼太郎は新しいやつだが、毎話のように時事ネタが入ったり西洋妖怪がアジア妖怪をコテンパンにしたりとシビアなシーンも多い。

甘くなくスパイシーなお話が好みなのだろうか。

そしてこれらに加え、わたし好みのアニメも観るのだが、下手をすると子ども向けアニメより真剣にハマってくれている作品がある。

笑ゥせぇるすまんだ。それも89-92デジタルリマスター版のほうだ。

あまりに静かに観ていてくれるので、はじめは怖がっているのかと思ったがそうでもないらしい。

とうとう先日、視聴話数が70を突破。喪黒さんの名刺のフレーズが「ココロのスキマ♡お埋めします」になったり、セル画の動きがヌルヌルしたりしている。

子は、とうとう「私の名前は喪黒福造…」のオープニングで身体を左右に揺らすようになった。喪黒さんの歩き方を真似しているのか…。

 

勝手ながら、ここで70話までの私的まとめをお伝えしたい。

・ほとんどの話がお役立ち商品のおすすめ→お客が喪黒さんの忠告や約束をきかずに規約違反→「ドーン!」で制裁されるというパターン

・制裁のレベルはちょっと痛い目に遭うものから死亡まで振り幅が凄まじい

・喪黒さんの営業はわりと強引。はじめから相手を陥れようとすることもある。

・喪黒さんは女性に優しい。女子高生の万引きも「思春期の気の迷い」とかばう

・制裁で使われる「ドーン!」は、野犬を追い払ったりチンピラをのしたり攻撃としても使える。ワニに意思を与えてでっかくすることもできる。

・「ドーン!」は電話越し、PC画面越し、ゴルフボール越しからでも使える

・動物系の名前と見た目のお客はたいていラストで人間やめる

 

こんな感じだ。

子が一体このアニメのどんなところに魅力を感じているのかは不明だが、ブラックユーモアを理解するにはまだまだ先のことだろう。

「怖い」という感覚が芽生えるのも、おそらくもう少し先かもしれない。

まだまだ色んな作品に触れて色んな感情を育んでほしいぞ!と思いつつ、子が大人しくなることに甘えてつい笑ゥせぇるすまんを再生してしまうのだった。

 

先日、市のイベント「させぼ文化マンス」にお邪魔してきた。

年々グレードアップする闇鍋クオリティ…企画運営の質の良さが実感できた。

公共ホールの敷地内にテントサウナと水風呂が登場したのにはホント面白さの極みだと思うし、

テクノロジーを使った遊び心的な展示やトークイベントはもっと若い人に見てほしいと感じた。

東京から来た劇団の公演は大きな刺激になった。

東浜女相撲公演も好評だったそうだ。もちろん佐世保の伝統的な風習や催しなども、色んな形で伝え継いでいくべきだ。

来年もまた楽しみでならない。

 

この頃、子が夫婦のベッドに入り込んでくるようになってとてもせまい。

おまけに猫も乱入してきて大変混み合っている。

幸せなのだが結構寝るのが大変だ。

翌朝がとてもねむい。

 

 

 

 

佐世保が誇る「西沢本店」の手芸フロアを自慢させてほしい

手芸が苦手だ。

編み物をすればまっすぐ編めずに海ぶどうのようなものができるし、

縫い物をすれば縫い糸はあさっての方向へゆく。まともに布同士を繋ぎ止めることができない。

友人のためにマスコットを作ったときは、詰めたはずの綿が逃げ場を求めてわやわやと縫い糸の隙間から飛び出していた。友人に渡す前に、そっと元ある形へと戻した。

当然、学生の頃は家庭科の授業がいやでいやでしょうがなかった。しかしチャコペンとオバアチャン(針の穴に糸通すの手伝ってくれるやつ)への愛着だけはあったと自信を持って言える。

とにかく針と糸を持ちたくなくて、深夜の通販番組でアメリカ人が宣伝していた「塗るだけで綺麗に布が接着!洗濯してもゼッタイ落ちない裁縫クリーム」を本気で購入しようと考えたこともあった。

 

そんな、手芸が苦手で無知なわたしですら、ここはすごいと思う場所がある。

 

佐世保市四ヶ町商店街内に店舗を構えている「西沢本店」の手芸フロアだ。

 

すごいと思う根拠は、

  • 1フロアすべてが手芸と服地売場になっている
  • 日本最西端の佐世保の地にあること

が挙げられる。

 

ちなみにこのフロアは西沢本店の4Fで、他の階はアパレルや雑貨などのショップが入っている。

品揃えに関しては、手芸のジャンルによって評価が分かれるため「なんでも揃っているんだぞ、へへん!」と言い切ることはできない。

 

まずは見てほしい

 

この広さ。

 

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見渡す限り、布、布、布だ。布ダムが決壊している。

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お見せしたのはほんの一部だが、柄の情報量が多くて頭がくらくらしてくる。



今回売場を案内していただいたのは、スタッフ歴10年超の針尾さんだ。

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針尾さん曰く、右手に見えますのが初心者向けだそうだ

針尾さんによると、ざっくりこの通路を境に初心者向けと玄人向けに分かれるのだという。

やや語弊があるが、前者がコットンやパッチワーク系生地、後者は洋装服地(化合織、毛織物、シルクなど)という感じで、扱いやすさのレベルが違うということだ。

 

店内の品揃えは約5万点におよぶ。

長崎市や福岡にも支店があるが、九州髄一の規模だそうだ。

 

西沢本店の創業は1830年(文政13年)。滋賀近江國で呉服、綿麻物、陶器などの商いを始めたことが始まりだ。

明治にここ佐世保に店を構え、ファッション事業、服地・手芸・オーダーカーテン、呉服事業を展開。 

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日本一長いアーケード・四ヶ町商店街のなかからも入れます

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以来100年あまりにわたって、布・布・布にこだわり続けた。

かつて、手芸フロアは1階に売場があり、広さも品揃えも倍以上だったそうだ。

服をファストファッションやネットで購入することがメインとなるまえ、洋裁学校が隆盛を極めていた時代。

西沢本店をはじめ、さまざまなブティックや呉服店が軒を連ねていた。 

もれなく洋裁スキルを身に付けていた当時の女性たちは、世界に1つだけの1点ものを創るべくあちこちを駆けまわったのである。

 

意外とある、舞台衣装の需要

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わたしのポージングのリクエストが甘く、針尾さんがレギュラーの西川君になってしまった


フロアの最奥にありながらも異彩を放っているのは、舞台衣装コーナーだ。

佐世保でこんなに必要なのか!?と思うが、意外にも需要は多い。

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おひめさまのドレスのようなものからチャイナドレスに使える布まである

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保育園や幼稚園の先生たち必携の一冊だ


ピアノ発表会やダンス教室、あと幼稚園のおゆうぎ会などのステージ衣装に人気なのだそうだ。

わたしは以前公共ホールの受付窓口で働いていたことがあり、佐世保は意外にも教室やサークルがあることを知った。

毎年きちんと定例発表会が行われ、舞台衣装に身を包んだきらびやかな参加者たちで会場は賑わっていたが、そこと結びついていたとは。

Amaz◯nなど安価で手軽に手に入るこのご時世でも、丁寧な手作りにこだわる人がまだ居るということなのか。

「お母さま方…というより、おばあちゃまが気合を入れてお孫さんに作られるケースが多いですね」

なるほど、佐世保らしい。

西沢本店の客層は、服からドアノブカバーや電話カバーまで、身の回りのものはだいたい自分で作ってきたという手芸スキルを持つご年配の方々がメインだそうだ。 

自身の熟練した技を愛しい孫に捧げたいということらしい。

よくわたしに洋服や小物を作ってくれていた母や祖母のことを思い、少し感慨深くなった。

が、おや、わたしにはそのスキルがないぞ。

どうする…。

 

さて話は戻るが、舞台衣装コーナーの需要で特に佐世保らしいジャンルが、年に1回のビッグイベントとして君臨しているYOSAKOIさせぼ祭りのチーム衣装だ。

YOSAKOIさせぼ祭り』とは

20年続く佐世保の秋の一大イベント。全国からよさこい踊り手やファンがドカッと集まり、鳴子をならし大きい旗を振って「ハッ!」とか「ハーッ!」とか叫んで舞って涙したりする、大変ドラマチックな催しである。

 

衣装は演舞のクオリティやチーム色を出すのに重要な要素の1つだ。 

当然、既製品では物足りないと、徹底的に手作りにこだわるチームも多い。

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さわりごたえがあるぞ

  

ここは一見お会計レジのように見えるが、布のカットコーナーだ。

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よくレジと間違われます

なんと、ここでは10cm単位でのカットが可能なのだ。

他の手芸店などでは50㎝単位を採用するところが多いそうで、これはなかなか珍しいことのようだ。

かつてインテリア売場で布をカットする仕事をしていたわたしは、新人の頃お客のオーダーの+50㎝ほど長めにカットして「あとはそちらにおまかせします」作戦を取っていた。のちのちバレてお局からこっぴどく怒られた。

なので10㎝単位カットなんて尊敬の二文字だ。正確に布を裁つためには、相当熟練した技が必要だろう。

 

ちなみに、カットコーナーの近くにはカーテンの巻売りもある。

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ここで服用の布を調達するチャレンジャーもいるという

腰窓でも90㎝、掃き出し窓サイズだとハサミを入れる部分の長さが180cmからとなるため、かなりハードだ。

おまけに防炎やら遮光機能やら、分厚いカーテンのカットなど想像するだけでも心のハサミの切れ味が鈍ってしまう。いや、心にハサミはあんまりないほうがいいけど。 

 

ふと、年季の入った道具たちに目が行った。かなり使い込んでいるようだ。

「備品で最近増やしたものといえば、作業台1つぐらいですね。しかも色がついてるやつ。これまでのは台の色が真っ白だったので、レース素材とか、白い布が見えづらくって」

白い台で白いレースをカットする・・・。「はだかの王様」に登場する仕立て屋のような気分だろうか。

 

年季の入った道具たちは、長年スタッフさんを支えてきたのだ。

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年季の入った道具たち。亡き祖母を思い出してグッときた

ちなみに右側にあるのは、カットする布用のおもりである。

「売場をウロウロしつつも、結構ここで作業しますね。小学校の体操服用のゼッケンや、運動会用のハチマキもここで製作しているんですよ」

なんと、わたしたちがかつて頭に巻いていたハチマキは、こんな身近な場所で作られていたのだ。

使い終わった後きれいに洗濯をし、アイロンをかけて学校に返却した思い出…。

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陰ながら応援してくれていたのね

 

余談だが、こちらのカウンターではスタッフ手作りのレシピがゲットできる(コピー代が必要、一部有料)。

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空いた時間にせっせと手書きでつくっているそうだ

インターネットでも調べられるのかもしれないが、こうして手渡しでもらうのも温かみがあって良いしコピーの手間も省ける。

洋服に限らず、バッグやエプロン、子どもアイテムなどさまざまなレシピが揃っているので、活用してみてもいいかもしれない。

 

 

わたしが服地コーナーの次に自慢したいのが、ボタンコーナーだ。

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なんかもう標本みたいです

ボタンが入った箱がズラリと壁一面に並ぶさまは圧巻である。

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箱入りってのが良いんです


持参した服とあわせながらボタンを探すお客さんも多いため、売場には鏡とテーブルが設置してある。

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テーブルは、手芸教室などで使用することも多いそうだ。

それにしても、ボタン冥利に尽きる売場環境ではないか。わたしがボタンならここで輝いて一生を終えたい。

 

使い道がわからないレトロな仕様のものもあるが、アクセサリー用でたまに売れるらしい。  

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ちなみに一番高いボタンは、1220円のものだ。

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以前は2000~3000円クラスのものもあったそうだが、時代とともに売場から消えて行ってしまったという。

小学生くらいの頃、ビジューだったかカメオだったかとても綺麗で高いボタンをなけなしの小遣いで買ってお守り代わりにし、あっさり失くして泣きべそをかいたのが懐かしい。 

 

 

ここは毛糸コーナーだ。

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以前はもっとスペースが広かったというが、十分広く感じる

什器1つぶんとかではなく、毛糸専用に1つの空間が設えてある。

以前はベテランの専門スタッフがいたそうだが退職してしまったそうだ。

毛糸専門…勝手だがこんな女性を想像してしまった。

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「あら、いらっしゃい」と気さくに声を掛けてくれる。いつも揺れるイスに座っているし基本立ち上がらない

専門家が抜けた穴は大きい。

若手スタッフはなんとか顧客の要望に対応すべく、編み物の勉強にも励んでいるという。

こうした、古株のスタッフが抜けていくというのも今後の課題の1つだそうだ。

ちなみに手芸フロアのスタッフは女性がほとんどを占めているそうで、男手が足りず力作業が厳しいため、手がつけられない部分もあったりする。

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取り扱いがなくなったものの動かせない縫い糸の什器。個人的にはかわいいのでこのままでもいい

 

 

売場のさらに奥へ行くと、なんだかものものしい雰囲気に。

明らかに素人では取り扱えるレベルではない布たちが「なにしに来たのよアンタ」と言わんばかりにこちらを見ている。

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わたしでもわかる。シルクだし1つ1つが手染めのスゴイやつだ。

「これは・・・!」コナン君ばりにひらめいてみたが、品名が出てこなかった。

「インド更紗、ジャワ更紗ですね」

針尾さんが丁寧に教えてくれた。

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ほんなこてすごかですばい(本当にすごいですねの意)

思わず値札に目を見やる。

「ヒィッ!思っていたよりゼロが1個多いッ!」

 

ここはおあつらえの世界へのゲートだった。

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いったいどんな人が買いに来るのだろう※こちらの催しは終了しています


 

西日本ではここだけ。手芸用品フロアにあるオーダーコーナー

 

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おあつらえ、オーダーメイド。

手芸フロアにある婦人服オーダーコーナーは、西日本ではここだけだそうだ。

東京や各地からわざわざメーカーが訪れて「ウチの布を売ってくれ」とお頼み申すレベルで貴重とのこと。

 

「CHANNEL」「GUCCI」「DORCHE & GABBANA」「GIORGIO ARMANIなどなど、世界の名だたる超高級ブランドの布地が並ぶ。

熟練したバイヤーが東京・大阪などから買い付けた100点を超える特選生地だ。

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ドルチェ&ガッバーナ

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グッチやヴァレンティノ、アルマーニなど

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えーと、えーと、すごい!

どのコーナーも眩しすぎてすごい。

セレブ達を一カ所に集めたパーティーにこっそりお邪魔している気分だ。

しかも油断した場所にカシミヤがそっと畳んであったりして「あっ!そちらにもいらっしゃったんですね!すみませんすみません」と、うっかりチラ見で済ませてしまった自分を責めたくなる。

 

服地だけでも、2ピース1着分で10万超えは余裕だ。もちろん作るアイテムによるが、完成時にはオーダーメイド料金で倍以上の金額になる。

しかしそんなことは、クライアントにとってはどうでもいいことなのだ。

パーティードレス、冠婚葬祭から普段着まで、とことん時間をかけてこだわりぬいた最高の一着を手に入れることにこそ意味があるのだから。

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皇室のあの方も色違いをお召しになっていたというレモラファブリックの布まで。シルクのふくれ織りで、まるで羽衣のように軽い(持ったことはないけども)

 

オーダーメイドの流れは、ざっくり言うとこうだ。

  1. 生地・デザイン選び
  2. 仮縫い(フィッティング)
  3. 本縫い
  4. 完成

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ここでじっくりとクライアントの要望をヒアリングする

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世界中の御洒落マダムたちを撮り続けるアリ・セス・コーエン氏の写真集も常駐



生地選びから出来上がりまでを担当しているのは、服飾デザイナー歴35年の中嶋さんだ。

スタッフの皆さんからは親しみと尊敬を込めて“中嶋先生”と呼ばれている。

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クライアントのリクエストに限りなく近づけるようデザインを起こしていくことも中嶋さんのお仕事だ。

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仮縫いの段階。ここからまたサイズやデザインの確認が入る


奥にある作業スペースも見せていただいた。

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服のパーツに応じた柄あわせや、正確な裁断スキルが要求される。このあたりはチームでの作業になる

1つの洋服をつくるのに約1か月半から2ヶ月。その間、5名のプロフェッショナル達がその手腕を惜しみなく発揮しているそうだ。

数㎜単位の正確さが求められるのは、いったいどれほどのプレッシャーなのだろう。

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毎朝みんなで読み上げる。気合入れるのも大切だもの。

最高の1着に到達するまでには、スタッフやクライアントが顔を突き合わせてああでもないこうでもないと何度も何度も試行錯誤を繰り返す。

オーダー服には、糸や布といった材料に加え、クライアントの愛情とこだわりがもりもりと込められているのだ。

この、完成に至るまでの過程が楽しくて、そして最高の着心地にオーダーメイドの沼にハマってしまうひともいるようだ。

頭の先まで沼に浸かってしまうと、既製品は着られなくなってしまうらしい。

 

いったいそんなクライアントさんってどんな人たちなの?

中嶋さんがこれまで担当してきたひとのなかには、「おあつらえしたお洋服(50万強)を着てカラオケに行くのが楽しいの」という女性がいたそうだ。

または、旦那さんが長年連れ添った奥さんへドーンとプレゼント、などなど。

うらやましいというより、とても素敵なことである。人生を盛大に謳歌している、すがすがしいお金の使い道だ。

 

佐世保だけでなく福岡や 中国地方あたりからわざわざ来店するクライアントもいるとのことで、わが街自慢がとても意外なところにあった。とても誇らしい。

しかし現在のところ、この中嶋先生が引退されるとのちの担い手が居ない状態だという。

そういうわけで、中嶋先生の元で修業したいという次世代の服飾デザイナーを随時募集中だ。

佐世保のためにも熟練した腕をお持ちの方、宜しくお願いします。

 

 さて、オーダーコーナーから一歩出れば、さきほどぐるりと案内してもらった、ものづくりを応援するひとたちが働くステージだ。

「この仕事のやりがいは?」と、針尾さんに尋ねてみた。

「お客様のお役に立てるよう励みながら、わたしも多くを学ばせてもらってます。そこで磨いた技や知識をお客様に還元して喜ばれるのが楽しいですね」とにこりと笑う。

接客や勉強を通じて新しい刺激やアイディアが生まれ、それが作品に反映されることもやりがいなのだろう。

ものづくりに終わりはない。研究と実験の日々だ。

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北欧テイストの布コーナーを飾るニョロニョロに技術が還元されることもある


「刺繍糸ひとつで作品の印象もガラッと変わるんですから、あなどれないんですホント」

 

まるでアートの世界だともおもう。

とどまることのないものづくりへの情熱が、西の果てで静かにホワホワ渦巻いている。

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いくつになっても、「ヒラメイて・キラメイて・トキメキたい」のだ

 

ちなみに彼女のお気に入りの布は、こちらのアンパン柄だ。

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てっきりアンパンマンのことだと思っていたが、ほんとうにアンパン柄だった

 

 

 

さいごに、佐世保の淑女たちに人気のアイテムを一部ご紹介したい。

 

【繭玉】

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発泡スチロール製の玉に、さまざまなちりめん布を貼り合わせて作るもの。糸を通してぶらさげたり、置物として飾ったり。佐世保市江迎町の街を彩る春の風物詩ともなっている。

 

【キューピーの衣装】

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もはや孫の服をつくる感覚だ


ほんとうにさまざまなバリエーションがある。街中でおばあちゃんと親しくなると、おもむろに渡されることがある。

 

ほかにも、5円玉をベースにカラフルな糸をぐるぐると巻き付け成形した「5円玉マスコット」や、ビーズで作られた中型のプードルなどがある。これらもまた街中で(以下略)。

 

 

ものづくりはやっぱり楽しい

わたしは活字の世界であるが、作品を創るということはやはり楽しい。

しかもそれが形を残し、人の手に渡り、喜ばれるものであればなおさらだ。

自慢ではないがわたしの母はこの道40年以上のドール作家、同居しているお義母さんもまた40年以上服や小物などを極めに極めている。

2人ともまったくテイストが違うので、とても面白い。

 

【母】

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ⓒ1996-2019 moko-doll

【お義母さん】

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ⓒ十七番倉庫 by natsuerogers

 

創作は自分の分身をつくることにも似ているなと思う。

 

そんな2人に囲まれていながら、わたしには数ミクロンも彼女たちの持つ技術が受け継がれていないことが悲しいところなのだが、

とりあえず自分にできることを地道にやろうと思う。

しかし、子どもが色々と認識できる前には、雑巾の1つでも縫えるようになっておきたいものである。

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お義母さんがネットで購入したニコラスケイジのクッションカバー

 


 

 

 ※取材にご協力くださった西沢本店手芸フロアのみなさま、誠に有難うございました。

 

 

 

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★好きです、西海楽園フォーエバー。 

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孤高のアドリブ芸

蚤の市に行ったりしているあいだに10月が終わった。

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11月だけどそんなに寒くないね、という話をした。

ちなみに昨夜のハロウィンでは、夫はジョーズのコスプレをした人物と街中でハイタッチをしたそうだ。

至って平和な佐世保のハロウィンである。

そういえば、子になにかコスプレを、と思ったけれど何も準備していなかったので、普段どおりだった。

時期はズレてしまうが、今度てんとう虫のコスチュームを着せようと思った。

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子の激しい自己主張が続く。

絵本をひらいてよ、読んでよ、仕掛け絵本の穴にわたしが指を突っ込むからその裏から母がなんかモジョモジョするなりなんなりやってよ、という簡単なものから、

わたしが持ってくるもの全てに命を吹き込みなさいよ、といった難易度の高いものまでさまざまだ。

手渡された側のわたしは、なんらかのアクションを起こさないと彼女に怒られるのである。

敬愛するFさんがご自身の娘さんのことを「チコちゃん」とおっしゃっていたが、なんとなくその気持ちがわかるような気がする。

しかし、この「お題を与えられてリアクションを求められる」というのは本当に無茶ぶりだ。

もともと日常会話に加えてアドリブ芸が最弱なわたしなので、とても苦しい試練なのである。

声色を変えることはもちろん、アクションの1つ1つに活きがなければならない。

一度、スマホをクッションで隠し見ながらもう片方の手でパペットを機械的に操っていたところ、子に早々に見破られ手にはめていたパペットを抜き取られ放り投げられるというお叱りを受けた。

それ以来、変なごまかしはやめようと心に決めた。

 

ごまかしの精度をあげねばならない。

片方でパペットマペットも驚くような精度の高い操作をこなし、もう片方の手ではスマホを巧みに操り情報収集およびテキスト作成に勤しむのだ。

これができれば誰も悲しまない、なんと素敵なことだろう!

おそらくそんなことはできるはずもないので、きちんとそれぞれ別々に時間を確保しなければならないなと思った次第だ。

ところで今日は1が3つ並んでいるけど、フライングでポッキーを食べてはいけないだろうか。10日後まで待てないよ!

 

 

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ながさきプレスさま「佐世保ごちそう大図鑑vol.5」のお仕事が楽しかったよって話

この度ありがたくお声掛けいただき、「佐世保ごちそう大図鑑vol.5(発行・ながさきプレス 10/27)」でお仕事させていただきました!

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お義母さんに「あなたがやったトコふせん貼っといて!」と言われたので貼りましたが、

お仕事の跡が目に見えてしみじみ感動…

お義母さんには子のお世話でとても助けていただきました。ありがたや。

 

こちらの本、通称SASEBON(させぼん)は、佐世保東彼杵・西海・平戸・松浦の飲食店460店舗と観光情報がもりもりと1冊に凝縮されてます。

わたしは少しではありますが、佐世保エリアの一部店舗さまの写真とテキストを担当させていただきました。

 

出来上がった本を手に取った瞬間は感動もひとしおでして…

紙の本ってやっぱり良いですね。

内容は佐世保愛があふれんばかりで、読みながらニヤニヤしてしまいました。

そしてなにより、プロの料理の写真が素晴らしすぎる!

このお仕事を受けて痛感したのが料理写真の難しさでした。いかに料理やお店の個性を出しつつ、美味しそうに伝えるか。自分の力不足を感じつつ、存分に勉強にさせていただきました。

 

 

以下、わたしが担当させていただいた飲食店さまの魅力をざっくりと↓↓↓

 

【イワモトコーヒーさま】

テキストメインで、お写真は一部掲載です。すごくお話好きで人当たりの良いオーナーさんが素敵でした。サイフォンコーヒーきれい。

 

【cafeないしょさま】

オーナーさんの情熱ほとばしる本格的なガレットが食べられるのはここだけ。長崎和牛のったやつ食べてみたい。

 

【キッチントンブリーさま】

タイ旅行で食堂に入ったかのような異国体験ができます。佐世保にあってよかった…。

 

【タコスの店エレーナさま】

老舗店の深みと貫禄も一緒に味わえました。また改めてお話を聞かせていただきたい!

 

【音食亭さま】

ハマると危険なちゃんぽんがあります。メニューの誕生秘話はもう一度じっくり聴きたいほど面白かったです。

 

プラトンの隠れ家さま】

幼い頃に嗅いだ、昔ながらのちゃんとした洋食屋の香りがエモさ爆発で泣きそうになりました。家族を連れてまた行きたい。

 

【海街食堂さま】

その名の通り、佐世保の魚介の魅力てんこもり。おしゃれ。オーナーさんは写真を撮るのがお上手で海の男気質。

 

【ラーメン小淀さま】

家系もちもちつけ麺最高でした。そばつゆ方式で飲み干すのが吉です。ロケンローなスタッフさんとの会話も楽しかったです。

 

【クイーンケバブさま】

ソース全部がけできるんだって!!やったことあるアメリカ人がいるらしい。とても優しい日本語が聞ける場所ですほっこり。

 

【いくたさま】

ジャンボエクレアにかぶりつきたい!!!こちらも佐世保スイーツの老舗。

 

くるりん木風店さま】

高級食パンの味に目覚める。やはりいつどの時間で行っても駐車場がいっぱい、すごい。

 

【小料理かん田さま】

同じく子育てに励む奥さまとお話ができて盛り上がりました。取材より長かったかも。家庭で育んだ幸せも食材の1つであるのだなぁ。

 

 

ライターとしての課題も感じつつ、とても楽しい経験となりました。

佐世保のみならず佐賀、福岡、熊本あたりにお住まいのみなさま、なんか大きい書店に並んでるかもなのでお見かけした際はぜひお手に取ってご覧ください!

そして佐世保に遊びに来てくださいね〜。

 

そしてそして、もしこの記事をご覧になった方でヤマモトにお仕事くださるという方はTwitterDMなどでお知らせいただけると飛んで喜びます。宜しくお願い致します。

 

 

 

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【珍スポット】佐世保の「ゆうれい坂」って知ってる? | させぼ通信

子にいつも顔を踏まれている

朝7時に起きて、夜20時には猛烈な眠気がきて日付が変わる前に眠る、という生活をわりと長く続けている。

1歳を過ぎた子は、よりエネルギッシュさを増し、我々よりも活発に動き回っている。

わたしは楽な体制でいたいのでごろんと横になるが、子はお構いなしに柔らかい足でわたしの顔面を踏んづけてくる。

顔面はヤダ、と思い優しく子の足を押しのけようとすると、髪の毛の根元に引っかかりそのまま地面に着地した。

耳元でブチブチとわたしの毛が臨終になる音を聴いた。

その後バランスを崩し、結果わたしの顔面に子のひざが降りおろされることになるのである。

そんな夜をいつも過ごしている。

 

従兄弟の結婚式で家族総出で名古屋へ向かった。

まだ飛行機に子を乗せるのが怖かったので、夫に無理を言って休暇を取ってもらい、面倒を見てもらうことにした。

お義母さん共々、子のお世話をしていただいて有難い。

1泊2日、小さなDバッグ1つで荷物を準備した。

子が居ない久しぶりの遠出、かなり身も心も軽かったが寂しさもあった。

母と妹1と他愛もないおしゃべりをしながら長崎空港へと車を走らせる。

空港は平日にも関わらず人が多くて、旅行気分をさらに盛り上げてくれた。

空港内のセブンイレブンでサクッと朝食を買い、颯爽と飛行機に乗り込む。

3人がけシートの窓側に座る。

やったぁ景色が見える、と思うが、楽しむのはたいてい15分程度だ。

ANAの機内では、搭乗の際の注意事項の映像が流れていた。

出演者が全員歌舞伎俳優で、それはもう所作が美しかった。

朝食用に買った2つのおにぎりが、どちらもマヨネーズ系だったのでガッカリした。なぜ気がつかなかったんだ。

1時間半ほどでサクッと名古屋国際空港に着いた。

ほんと文明すげぇなと思った。

 

空港に降り立ち、荷物を受け取りに。

ここはやはり地元アピールゾーンになっているようだ。

遠慮がちに、荷物が流れるレーン沿いに生産量日本一だという招き猫がパラパラと置いてある。

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なぜか、レンズが曇っていた。

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妹2と落ち合う。

「わからなくなるからあまりウロウロするな」と釘を刺される。

ウロ、としかけたが、もときた到着口の前に戻って3人でおとなしく固まっていた。

妹2がこちらにやってくる前に、ヨッピーさんの記事を読む。

名古屋観光にありがちな、行くところなんもない問題を解決した | SPOT

名古屋なにもなさすぎて、とうとう三重県の話題が出てきたのでどうしたものかと思ったそのとき、ちょうど妹2がやってきた。

彼女はいま九州を離れこっち方面に住んでいる。

ここから電車で30分程度の場所かと思いきや、羽田空港経由で1時間ほどかけて到着したらしい。

本当にわたしは、この辺の土地感がまったくない。

 

とりあえずどこかでご飯、ということになったが、土地感ゼロ事前リサーチゼロの我々は吸い込まれるように高島屋へと導かれた。

とりあえず人の流れに流された形である。

バカでかいビルには小さく赤い文字で「takashimaya」と書かれている。

そうか、これがあの玉屋の紙袋と同じ紙袋の高島屋か!!と1人で小さく感動した。

させぼあるある:佐世保を思い出しちゃう紙袋 | させぼ通信

 

とにもかくにも最上階のレストランフロアへ向かったが、平日なのにどこも激混みだった。

味噌カツ味噌煮込みうどん、きしめん…せっかくだから鉄板の名古屋グルメを味わいたいという思いが裏目に出た。

思うにいま目の前に並んでいるのはわれわれと同じ観光客だ。

身なりとか雰囲気とか。われわれ含め単純なやつらだ!

こういう場合、夫ならサクッと地元民が行く穴場店を探し当てたりするのだが、わたしにそんなスキルはなく、

Googleに「味噌カツ」と検索ワードを入れたところでこういうショッピングエリアの店かチェーン店しか出てこないのだった。

結局、若干空いていた味噌カツ屋に入った。

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すこぶる美味だったが、ボリュームがすさまじく夜の叔父たちとの会食が心配になった。

 

その後もまたウロウロして、ホテルにチェックインして同室の母とおしゃべりした。

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部屋にあった、写真集かカタログかわからないおしゃれな本。

その後、作成中の記事原稿をフロントのFAXで先方に流したりした。

ものすごく仕事をしているひとみたいだった。

1枚あたり110円でコンビニの2倍かよと思ったが、確実に届いてくれるならそれも良しとお願いした。

 

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妹2から台湾土産をもらったりしつつのんびりしているあいだに、叔父たちとの会食の時間が迫っていた。

場所はなんと、高島屋でわれわれが昼食を取った店の隣だった。

ふたたびわれわれは、高島屋へと吸い込まれた。

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雨降る夜の名古屋。ブレた。

 

 

 

 

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アイテム多めの愛

子のバースデー2日前に、母と妹1がお祝いに来てくれた。

当日以降がなかなか来れないので、早めにお祝いしたいからということだった。

11時ごろに到着するという話を事前に聞いてはいたのだが、子が眠り始めたのにあわせてついつい一緒に眠ってしまい、目を覚ましたのは呼び鈴がなってからだった。

親子ともども寝起き頭で母と妹1を迎え入れる。

 

母は猫パペットを手作りしてくれた。さっそく手にはめて遊んだ。

後頭部に子の名前がデカデカと刺繍してある。かわいい。

子は喜びながらも、殴打やぶん投げを披露していた。

ビーズの目を取ろうとしていたので「粘膜系はやめて!粘膜系はやめて!」と必死に止めた。

妹1はとにかくたくさん贈り物を買ってきてくれて、箱入りのスムージーや1歳からのかっぱえびせんスマホ型おもちゃなどバラエティ豊かだった。

一番謎だったのはジャイアン柄のトレーナーだが、子の性格を考えるととてもマッチしている気がしたので素敵なチョイスだと思った。

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大きめサイズだったので、おそらくきちんと着ることができるのは来年の秋ごろになりそうだ。

きっとその頃にはジャイアンとしての素質が十分に育っているはずだ。

子の周りにプレゼントを並べて記念撮影を試みるが、どうしても動いてしまうためうまくいかない。

あれこれとつかみにかかる中、箱入りのスムージーにやたらとご執心で、中身を開けろとわたしに押し付けてくる。

箱の状態でなぜ食べ物だとわかったのか、そこは謎のままだ。

 

知恵熱も超え、一段とものを考えるような顔つきになってきた。

悪いことをしているときにはこちらの様子をチラチラ伺うし、いたずらモードに入ると小悪魔のような笑みを浮かべる。

「ホレ!これされたら困るだろ、ホレ!嫌なら構ってよ!」という声が聞こえてきそうだ。

 

夫のタロット遊びに付き合った。

1歳の選び取りで並べたら面白いんじゃないかという難しいことを話しながら、なんとなく夫から差し出された束からランダムで引いたカードの意味が「上ばかり見ずに下を見ろ」的な内容だった。

ちょうど今の境遇と重なる部分があり、占いですらない戯れだというのにひどく心に刺さってしまった。

そしてその翌日、家計簿とスケジュール帳を購入するに至る。

わたしがもしレジ担当だったら、「ああ、心機一転したいんだこの人」と思うくらいにわかりやすい行動だった。

スケジュール帳をきちんとつけて終わったことがないのに毎年買いたがるのは恒例行事で、しかし今年こそはきちんとしようとは思う。

たいてい中途半端に書き込んだそれをたまに開く程度になり、それが仕事先だった場合「こいつどれだけスケジュール穴だらけなんだ」と印象を抱かれてしまいがちだ。

そんなところからもう卒業したい。

フルカラーの家計簿を開き、財布に溜まっていたレシートを黙々と処理していく。

かわいいイラストの中に、わたしのいびつな字がぽつぽつと現れることで空間が歪んでいく。やはり自分の字は好きではない。

そして数10分後、やはりこの手の作業は苦手だと痛感するのであった。

 

 

 

 

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