気を取られすぎて説明が追いつかない
子の3.4ヶ月健診の日がやってきた。
これまで体重や身長は「おもいね」と「でかいね」だったので、具体的な数字が出るのが楽しみだったのだ。
また、特に大きな心配ごとはなかったが、うんちが2日に1回ほどしか出ないのが気に掛かっていた。
お義母さんに車を借り、意気揚々と市の施設へ赴く。
13時から始まるとのことだったが、すでに健診フロアには30組以上の親子が順番待ちをしていた。
1時間半ほどで終わるだろうと踏んでいたが、予測が甘かったようだ。
フロアの真ん中には、きょうだいが遊べるプレイゾーンがあり、その周りを取り囲むように横長い椅子が並んでいる。
わたしのようにママひとりもいれば、パパママ、はたまたジジババ勢揃いのご家庭もある。
3.4ヶ月健診にかける並々ならぬ情熱を感じる。
受付を済ませ、とりあえず空いている先に腰をかけた。
子は膝の上で外向きに抱っこするとご機嫌になるのでそうしたが、周りをせわしなくキョロキョロと見渡していた。
そりゃ無理もない。
わたしだってつい見てしまう。
それだけに情報が多いのだ。
抱っこひも、縦抱き横抱き、椅子に寝かせる、膝に座らせる(外向きor対面)…当たり前だが、みんなそれぞれのスタイルで赤子との空間を作っていた。
フロア全体を引きで見ると、まるでじゃがいもが服を着てゴロゴロしているみたいで笑えてきた。
もちろんわが子もその1つだが。
しかし、同じ月齢でも体格や毛の生えかたなど、こうも違うのかと驚かされる。
ツルツルな子もいれば、トサカのように跳ね上がっている子、モンチッチみたいにもみあげがハンパない子。
お義母さんに「周りが気になってしょうがなくなるわよ」と言われ、「いやいや、そんなことは〜」とか返していたが、そんなことはあった。
とにかく興味が先行して見るのをやめられない。
そろそろ目線を他のところに移さなければ。
子よりわたしが興奮してどうする。
なんの意地かは知らないが、人前で子を抱いたままスマホをいじることには抵抗があったので、その後は目の前に並ぶ絵本のラインナップや、モニターで流れる赤ちゃんマッサージの動画をひたすら眺めていた。
動画は、ビデオカメラで撮影されたもので、音声と映像が昭和60年あたりの味わいを出していた。
テロップの代わりに画用紙にマジックで書かれた文字が画面いっぱいに映っていて、とても手作り感満載だ。
赤ちゃん…かわいいなぁ…
ここのところのわたしら家族は、すっかり子にマインドコントロールされている。
なにをしてもかわいいのだ。
脳がかわいいに埋め尽くされるのだ。
それ以外の語彙力を失わせるだけの破壊力があるのだ。
これまで見向きもしていなかった赤ちゃん動画はチラッと見るようになったし、しまいには「赤ちゃんポージングフィギュア」が欲しくなる始末で、母性がビチャビチャにあふれてしまっている。
ここは天国か。
でも、わたしの子が一番かわいいんだからね!!!
と、ここにいるみなさん全員思っているに違いない。
長い待ち時間を、子と遊びつつ半分眠りつつ過ごし、保健師、栄養士とのカウンセリング、身体検査を難なくクリアした。
特に問題はなかった。
安心無難なザ☆平均値だ。
「平均的でいいんだからね、良悪目立ちすぎてもいけない。社会に出るとそれぐらいがちょうどいいんだからね。それで、人の目が逸れたぐらいにこっそり大ジャンプすればいい。うまくやるのよ」と子にささやくが、大あくびで返された。
最後は、市立図書館のスタッフさんによる「ブックスタート事業」のご説明だった。
ブックスタートとは、ざっくり言うと親子で絵本にふれあう機会をつくってもらおうとする事業で、絵本の無料配布や図書館利用の説明がなされる。
佐世保ではこのタイミングで行われるようだ。
促され席に座ると、さっそく子が「はじめまして!」の愛想スマイルをかました。
「アハァッ!いや〜、かわいいですねぇ。笑ってくれましたよ!あっ、どうもはじめまして〜。説明させていただきますね」
つかみはバッチリだ。
しかし、あまりににぱにぱと子が笑うので、そのたびにスタッフさんを足止めすることとなった。
「絵本の大切さはですね、、あっっ、また笑ってくれたぁ…!これはもう、たっぷり愛情を受けてるということですね、いいお顔されてますもの。目で追ってる!すごい、目で絵を追ってるの!…えっと、こうやってお膝の上でね、絵本を開いてコミュニケーションを…アッハァ〜!も〜う!また笑ったァ!幸せね〜、この子は幸せですよ!そして絵本の読み聞かせの大切さは…」
気を取られすぎて説明が追いつかない。
こうして無事に健診はおわり、13:00前に家を出たのが帰宅したのは16:30だった。
まぁまぁな長丁場だった。
もともと午前中に予防接種に行ってからの健診コースで考えていたため、日にちを分けて正解だったと思った。
帰宅し、さっそくもらった絵本を子に読み聞かせた。
存在の詩人と称される、まど・みちおさんの絵本「ママだいすき」だった。
まーたそんな母親を神格化して感謝を子に強制させるようなことするーぅなどと思って開いたが、いろんな動物たちが母親とともにある姿を淡々と描いた、心がほんのり温まる絵本だった。
「ちゅうちゅう」「にょろにょろ」など、当然のことだが活字は少ない。
スタッフさん曰く「お母さんのアドリブメインでヨロ」とのことだったが、「にじいろの、蛇が、いますね。ん?これは、これは、帽子のようです」と滝沢カレンのような話し方しか出来ず、自分のアドリブ力の無さを痛感した。
その夜、お義母さんは夫からwishで送料のみで届いたというモハメドアリのポスターをプレゼントされていた。
夫は「初期設定めんどくさいなぁ」と言いながら、iPhone8とにらめっこしていた。
【記事を書かせていただいてます】
【日常あれこれ】
絵本カンカンするやつ。かわいい。#bookstart #佐世保市立図書館 #ブックスタート #絵本 #読み聞かせ
喉を潤すために買ったアイスは、うっかり先にお茶でも飲もうものなら食べるモチベーションが一気に下がるので注意が必要だ
— chirolpakutiaji (@chirol1660) 2019年2月13日