子をスポーツ界から遠ざけようとする節がある
連休最終日。夫が職場の人たちを招いて庭でバーベキューをするという。
開始時間を尋ねると、午前11時。
この日の天気は快晴もいいところで、梅雨の合間の真夏日だった。
気温が30度近くまで上がるという天気予報を頭の中で反芻しながら、炎天下に躍り出る夫を見守った。
彼はお義母さんに火のつけ方をレクチャーしていた。ほんとうにアメリカ人みたいだ。
ゲストの方々が賑やかに到着した。
5歳と6歳の、来年小学校に上がる男の子連れだった。
みんな20代前半で、かなり久しぶりに感じる若さの波動に枯れかけのわたしはシビビときた。
さっそく冷やしていたビールを取り出し、乾杯を始める。
炎天下で飲むビールは美味いし、尿となることなく汗として排出される。
トイレいらずだが、とても不健康だとおもう。
夫がわらじのような肉を手際よく網の上で焼いていく。
いつのまにかカットされた肉はそれぞれの紙皿の上に置かれる。
わたしもなにか作業をしたいと思い、初めて抱っこ紐を使ったおんぶにチャレンジしてみたが、やはり顔が見えないのが不安で早々に諦めた。
「かわいい、赤ちゃんかわいい!」男の子たちが子のまわりに集まってきた。
年子だが、まるで双子のように見える。
わたしから見れば彼ら3人は同じ子どもだが、やはり赤ちゃんと子どもという線引きはなされているらしい。
「きみたちも5年前はこうだったんだよ」と言うと、そうだっけといったふうに首をかしげる。
彼らには子と近い年の妹がいるのだが、今回は家族に預けてきたということだ。
「子ちゃんは、ぼくたちの妹と同じくらい好き!」と、なんの臆面もなく感情をぶつけてきてくれる。
感情のグラデーションがまだ荒い年齢ではあるが、太陽光線並みのストレートさに思わず圧倒されてしまった。
彼らは哺乳瓶でミルクを飲むわが子を見て「すげー!飲んでる!」と目を輝かせていた。
母から作ってもらった帽子が大活躍だった。長時間は外に出せないので、室内と行き来しつつ肉をつまんだ。
バーベキューの肉はどうしてこうも美味いのか。毎日これでいい。
夫は「暑い、熱い」と言いながら外で肉を焼き続け、キッチンで中華鍋を振り回し焼きそばを作るマシンと化していた。
いったいなにが彼をそこまで動かすのだろうか。
奉仕の精神なのか、意地なのかプライドか。
ひょっとするとこの炎天下の中で一番アツイのは彼なのかもしれない。
若者たちは室内で涼むことなく、外を満喫し、冷蔵庫いっぱいのビールを空にした。
とても清々しかった。
そして持参していたボールとミットを取り出しキャッチボールを始めた。
そしてほどなくして、エアストラックアウトを始めた。「いまから◯番当てます」とかいうやつである。えぼしスポーツの里のイベントチラシでよく見るやつである。
これはわたしがこの家にお世話になってから初めて目にする、スポーツの光景だった。
わたし含めだが、この家の人間はみんなスポーツに興味がない。
この家のバーベキューといえば、トークがメインで、ギターを弾いたりKPOPにあわせてダンスを踊ったり人狼ゲームでヒリヒリとした時間を過ごしたりする。めちゃイケの加藤浩次のような乱闘もあった。
野球について思い出してみる。
父方の祖母が大の野球好きで、毎週日曜に訪れていた時は必ずといっていいほどテレビ中継を流してテレビの前にかじりついていた。
巨人、巨人!としわがれた声で声援を送っていた。
その時間帯が夕方のお風呂上がりだったので、今でも野球の応援を聴くと、風呂上がりでホームランバーを食べていた当時の思い出がよみがえってくる。
その程度なわたしに対して夫は知識だけは備えているのだが、観戦やプレーには至らないようすだ。
それどころかわれわれ夫婦は、子をそうしたスポーツ界から遠ざけようとしている節さえある。
話が逸れたが、20代のゲストたちは高校生の頃はガッツリとスポーツで汗を流し、今もバッティングセンターに通っているという現役っぷりだ。
ボールが壁を打ちつける重く乾いた音が、わが家の庭で鳴り続けていた。
男の子たちはつねにフルスロットルで、水の掛けあいやバッタ採集に明け暮れていた。
あいまあいまに子を愛でにやってきては、外へ飛び出していく。
子どもの無尽蔵の体力をありありと見せつけられた。
子が彼らの年になる頃わたしの年齢は、とシミュレーションしようとしたけれど、本能に「辛くなるから黙って肉を食え」と言われたのでそれに従った。
その後、満腹になったゲストたちを部屋に招き、マリオパーティーで22時近くまで盛り上がった。
夫は、この時間に出したバナナスムージーを料理の締めくくりとした。
結局何品つくったことになるのだろう。
ここまでがバーベキューだとすると、今回の記録は10時間近くだ。
バーベキューもある意味でスポーツなのかもしれないと、半裸で顔を真っ赤にしながら眠りこける夫を見ながらおもった。
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【日常あれこれ】
子が撮影。シーリングライトがぽっかりと浮いた月のようにみえる。