ヤマモトチヒロのブログ

佐世保在住フリーライターです。育児日記に混じって、地元佐世保の歴史や文化、老舗や人物について取材撮影執筆した記事を掲載しています。

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チラつくのはあの白塗りたち

土曜だが夫は仕事だ。

わたしは無職のくせに、土曜日の空気に甘えるかのようにのそりと二度寝してのそりと起きた。

子は布団に入ったまま、母よ、やっと起きたのね、という顔をしていた。

Facebookを開くと、卒業式を迎えた看護学生たちの姿を写した投稿がちらほら見られた。

 

2年前だっただろうか。いまは看護師をしている妹2が、看護学校を卒業したときのことを思い出した。

B型でずぼらなわたしと妹1と母に対して、しっかり者のO型妹2。

わたしたちが佐世保からわざわざ来てくれるからと、妹2は卒業する学校の地図やバスの時刻表などをしっかり手配してくれたうえ、「当日は雨が降るから、傘持ってきてね」と一言くれた。

にもかかわらず、誰一人として傘を持ってこなかったことに心底呆れていた。

持ってこなかった理由は、われわれ3人揃って「たぶん降らんやろうと思った」だった。

そこそこどしゃ降りな雨の中、わたしたちはヘラヘラ笑っていた。

白衣を着た卒業生の足元には、在学生たちが散らした紙吹雪がカラフルな絨毯をつくっていた。

その上を白いナースシューズがぱたぱたと足跡をつけていく。

よく、ナースの現場は修羅場だと聞くが、命と向きあう仕事ゆえ自分にも他人にも厳しくなければいけないのだ。

まわりに飲み込まれてしまわないためには、刃のように鋭い自我が必要になるのだろう。

ナースは天使なんかじゃない

あの白衣はきっと鎧なのだ。

 

昼ごはんは、気まぐれで買ったクリームソースと余らせていたしめじで簡単なパスタを作った。

もう一品ほしいなと、あまったポトフを小さな器によそう。

手抜きだがそれっぽくできた。

お義母さんに声をかけ、2人で食べる。

子は、キラキラした目で食べるようすを眺めている。

もう離乳食を与えてもいいのかもしれない。

 

久しぶりに友人と観劇に出かけることになった。

出産祝いをもらってそのままだったので、お返しのギフトを買うべく少し早い時間に夫と出掛ける。

昨日行った美容室がある万津町へ。

ずっと前から営業している雑貨屋にお邪魔する。

オーナーのセンスがとても良く、キッチュでポップでエスニック、品のある北欧の風情もただよう魅力な商品たちが仲良く寄り添っている。

友人夫婦お揃いのカップと、キッチュなドールを買った。

無印良品に寄りみちした。

そこで、無印良品の最近のトレンドについての夫の苦言を15分ほど聞いた。

 

夫と別れ、合流場所へ。

友人の旦那さんを交えて3人で食事に行こうとなったので、

彼女が妊娠中だったのと肉食だという理由から浜勝に行った。

キャベツ食べ放題は魅力的であるし、もっともらしい理由づけにもなる。

実際、わたしも仕事をしているときはよく昼休憩に利用していた。

とにかくランチが安いのだ。

「妊娠のせいで食の好みが変わったから」と無理矢理言い訳をして、好きなカツばっかり食べていた。

 

演劇の話、妊婦のあるある話で盛り上がった。

友人の旦那さんは温かい目で楽しそうに話す彼女のことをずっと見ていた。

良い夫婦だ。

 

先輩ママ、というむず痒い肩書きがついたので、少しでも役に立つ体験談をと思い記憶を掘り起こそうとする。

まだ4ヶ月前だから鮮明に覚えているだろうと思いきやそうでもない。

喉元過ぎればなんとやらということのようだ。

とにかく今生きてて幸せなので、「大丈夫、なんとかなる!」程度のことしか言えなかった。

 

お腹が大きい友人を自分なりに気遣いながら、会場へ移動する。

外は雨が降っていて、わたしは手ぶらだった。

なぜ傘を持ってきてないの、と聞かれたが、たぶん降らんやろうと思った、と返した。

一生治らんなこれは、と思った。

 

会場で配られたパンフレットの中に、山海塾の世界初公演が3週間後に北九州で控えているのを知り、嬉しさのあまり座席で小さく飛び上がった。

すぐさま夫に教えようとスマホを開いたが県外だった。

観劇中は時々あの白塗りたちがチラつき、ちょっと落ち着かなかった。

 

劇を見終わって1時間ほど、お茶をしながら感想を言い合った。

共感ができず腑に落ちない点が多かった、というのがお互い一致するところだった。

しかしこれには観劇側の落ち度もあった。

共感を期待しすぎたのだ。

コメディタッチとはいえ、テーマが「不妊治療・望まぬ妊娠」というまさに自分たちにとってタイムリーなものであったがために、自分の経験や思想フィルターがガンガンに働いてしまったのだ。

完全なる色眼鏡で観ていたということになる。

演出空間や、役者の演技は素晴らしすぎるほど引き込まれる部分があっただけに。

母親脳と、演劇脳と、二通りの感想が生まれた。

これは今までにない面白い発見だとも思う。

どの作品にもいえることだが、観る側それぞれの立場によって当然抱く感想も変わってくる。

それをダイレクトに当事者として体感できたことがとても良い経験だった。

そして翌日、また同じ芝居を観に行くことになる。

 

お腹の大きな彼女と別れ、迎えにきてくれた夫に感想を話しながら家路に着いた。

やや不機嫌だった子に、放っていた詫びを入れ、風呂に入れる。

そのあと夫が作ったブリ大根を食べた。

とても美味しかったので、トンカツでお腹いっぱいだったはずなのにスイスイと胃に入っていった。

最後の晩餐は、と聞かれたら「夫の作ったブリ大根です」と迷わず答えるだろう。

 

最近、歌手のあいみょんに似ていると言われることが多い。

「子育てで自分にかまけてるヒマないんだけど、あいみょんに似てるって言われちゃうワタシ、どうよ、ホラホラ」的な意味も含めて夫にそのことを話すと、「いや、鼻が」と一蹴された。

その後、少しでも同意を期待してツイートした。

夫の友人たちからリプが来たが、その文面はどう考えても鼻くそをほじりながらの棒読みだった。

 

 

【記事を書かせていただいてます】

PKやまもと | させぼ通信

 

 

【日常あれこれ】

https://www.instagram.com/p/BuggQzXn7ny/

ンハァッハァアアアアアーーーン!!!!#山海塾 #北九州芸術劇場