注射でヨイショオと盛り上がった
わたしはまだまだ懲りずに、来週の天気が崩れがちだという天気予報を鵜呑みにしていた。
そしてわたしは花見に行きたかった。
佐世保各地のお花見スポットを今年一年で子と一緒に全部めぐるという計画を、実はつい昨日、立てていた。
なので、梅や寒緋桜はもう散ってしまったが菜の花からスタートできる時期なので、さっそく菜の花のスポットへ行こうと思った。
5年前にアップされた個人のブログ記事でしか確認することができないスポットがあり、日付を見ると3月中旬だったのでこりゃあいけるかもだぞと、この日のスケジュールにマストとして入れ込んでいたのだ。
その前に、子の4回目となる予防接種のために小児科へ赴く。
朝イチで行ったにもかかわらず、玄関前の待合室ではびっしりと順番を待つ親子で溢れかえっていた。
通常の診察と予防接種は待合室が別になるため、2階の待合室へと行き子を寝かせる。
ここは個室になっているため、大騒ぎさえしなければどう過ごしてもオッケーな場所だ。
暇つぶしにスマホと漫画を持ってきていたつもりだったが、どうやら車の中に忘れてきたらしい。
取りに行くのも面倒だったので、「いやあ、ぼくはもともとキミ一筋だったよ」と言わんばかりに子と遊び始めた。
待ち時間中は全力で遊ぼうと決めた。
待合室の赤ちゃん用ベッドは広い。
せっかくなので寝返りの練習をしようと、子をコロコロ転がしながら遊んでいた。
そのうち子がウトウトし始めた。
この感じは仮眠タイムだ、すぐ起きる、となんとなくわかった。
しかし子が寝に入ってしまった途端、さびしくなってしまった。
修学旅行の宿泊地で、夜のガールズトークで盛り上がっているときに、自分以外全員が寝オチしてしまったのと同じ気分だ。
やることもないので、じっと子の寝顔をみつめた。
まだまだ待ち時間は長い。
ふと、子に着せていた服を見ると小さな毛玉がいっぱいついていたので、全部むしることにした。
先生は1階の通常診察をさばきながら2階へあがり、予防接種もさばいている。
ホント、医者は体力勝負だろうなとおもう。
待合室に入ってからもうすぐ1時間が経とうとしていた。
子の服からむしり取って丸めていた毛玉が1cm台になろうとしていたころ、子の名前が呼ばれた。
結局わたしの読みは外れ、声を掛けて起こすまで子は熟睡していた。
やっと本番だ。
今回は2本とはいえ、BCGがある。
物心ついたときに肩にある注射跡を認識した身としては、どのようにしてこの注射が押されたのかをまったく覚えていなかったため、ある意味未知との遭遇であった。
ワクワクを抑えながら診察室へと向かう。
先生はいつものようににこやかに迎え入れてくれて、ささっと手早く準備をしたあと1本目の注射をプチッと子に打ち込んだ。
火がついたように泣く子。
わたしは毎回「よっしゃー、もうすぐ終わる、がんばれがんばれ!」とニコニコ顔で子を鼓舞する。
ここで親が子を可哀想なもの扱いしてはいけない気がするのだ。
そして先生はBCG注射を取り出した。
2cm大ほどの丸いハンコ状の物体に、アイアンメイデンよろしく小さな針がピンピンとついている。
これは恐怖だ。大人の目から見ても恐怖だ。
いまなら絶対されたくない。
覚えていなくてよかったんだ。
わけのわからないうちにされていて良かったシロモノだったのだ。
さすがにおぉ、と圧倒されていると、先生は子の腕に薬を塗布し、「ヨイショオ!」という掛け声とともに一箇所目を押した。
わたしも「ヨイショオ!」と掛け声に乗っかりながら、本当にハンコを押すようにするんだな、と興味津々に眺めていた。
2箇所めの「ヨイショオ!」は、先生とわたしにつられて看護師さんも声を発していた。
診察室は、ちょっとした祭り会場となった。
子はやはりギャンギャン泣いていたが、待合室に戻りよちよちあやすとケラケラ笑い始めた。
本当に子どもも忙しいいきものである。
小児科を出ると、11:00になろうとしていた。
かれこれ2時間ちょっと居たことなる。
一旦帰宅して、体制を整えてからお花見に出発した。
目的地の菜の花スポットは、やはり時期が早かったのか、あたり一面緑だった。
もともとは休耕作地対策のために菜の花を植えていた場所なのだが、こりゃひょっとすると諦めてしまったのかとも言えるような侘しさだった。
しかし高台から見る景色は最高で、子に声をかけながら10分近く周辺を歩いた。
さすがに7kg近くの子を抱っこ紐でぶら下げながら歩くのは体力勝負だった。
早々にへばり、車に乗り込んでその場を後にした。
夫の友人女性が佐世保に子連れで帰省していた。
お子さんはわが子と1歳違いのわんぱく男児だが、偶然にも誕生日が同じで、しかも過ごした産院も病室も同じという、われわれ家族とはなんともデスティニーな間柄である。
出産を控えたわたしに、自身が経験したメソッドを教えてくれたり産後に励ましの手紙をくれたりと、初産のもろもろをなんとか乗り越えられたのは彼女のおかげといっても過言ではない。
今回、用事ができた彼女は子を両親に預け、かなり久しぶりとなる1人の時間を過ごしていた。
そのついでに、わが家に遊びに来てくれたのだ。
わが子との初対面を果たし、嬉しそうに子と遊んでくれる彼女。
子もごきげんである。
用事のある時間まで、わが家で雑談していた。
1年上の先輩ママの経験談はとても参考になった。
夫もふむふむと聞いていた。
夜にまたわが家に寄ってくれるということで、その時間までだらりと過ごすことにした。
夫が冷蔵庫のありもので作った酸辣湯が半端なく美味だった。
うまうまと3、4杯食べたが、お腹だけパンパンで食欲は満たされなかった。
もっと、もっとだ。
子が寝返りをした。
お風呂に入って着替えさせるタイミングで素っ裸だったため、ストレスフリーでいけたのだろう。
満点をあげたくなるほど、美しいフォームだった。
一刻も早く感動を家族と共有したかったが、そのままオシッコされるのも困るので、そそくさとオムツを装着して服を着せた。
夜はまた、わが家に立ち寄ってくれた夫の友人女性と晩御飯を食べながら談笑していた。
離乳食のこと、病気のこと、あれこれ聞くとなんだか元気付けられた。
とりあえず3人とも意気投合したのが「子をキャラクターものに染めたくない」で、クエイ兄弟のDVD鑑賞会がはじまった。
子は色彩や対象物の姿形を認識せずずっときょろきょろしていた。
あれは大人が見ても不思議なものだからそりゃそうだろうと思ったが、頑張れば気に入ってくれるかもしれないと淡い期待は抱いている。
しかし、もし子に「あのおもちゃがほしい」と言われたときはどう対処しようかと、現段階から悩んでいる。
そのときは蚤の市に足繁く通って、グロテスクな人形のパーツやらネジやら古布やらを集めて来なければならない。
【記事を書かせていただいてます】
【日常あれこれ】
「遠いところからよう来たなぁネーチャン!まぁ、ゆっくりしてくんな!」という顔をしている。
おっ、寝返った。すっぱだかだけど。
— chirolpakutiaji (@chirol1660) 2019年3月16日