黄金色の夢をみにゆく
朝からわくわくして落ち着かなかった。
むしろ昨日の夜からだったようにも思うが、とにかくこの日は西海楽園跡地に行けるということでとても気持ちが高ぶっていた。
「七ツ釜鍾乳洞菜の花祭り」というイベント内で、開催日前後一週間限定で一般開放されるのだ。
西海楽園は、わたしが幼少の頃、まだ健在だった祖父母とまだ離婚していなかった両親とともに訪れた、数少ない家族揃ってのお出掛けスポットの1つだった。遠目から見てもハッキリとわかる巨大な仏像、園内各所に設置されたお堂や石仏の数々。
園庭には干支をモチーフにした像も飾ってあり、「私の干支はコレだから守護神これ!」と、一緒に記念撮影などをしたものだった。
たしか訪れたのは秋口で、コスモスが咲き誇り、肥料のやや強烈なにおいに包まれていたように思う。
当時はもちろん、その規模の大きさも何を目的に作られたものなのかもあやふやなままだった。
無彩色の記憶だったはずだが、思い出そうとするとどうしても黄金色がチラつく。
その黄金色が心の隅にずっとこびりついていて、いつか行こう行こうと思っているうちに閉園してしまった。
正確には、閉園して10年後にその事実を知ってショックを受けた。
たぶんB級スポット、というワードが幅をきかせてきたときだ。
そしていま、なんとなく当時の記憶を整理したいという気持ちもあり、現地に行きたい気持ちは年を追うごとに大きくなった。
そんなタイミングで、この一般開放の話を、お世話になっている方から聞くことができ、家族に付き合ってもらうことにしたのだ。
朝から支度をして、私の運転で西海市に向かう。
途中、休憩で立ち寄ったコンビニで夫の親友の両親と出会った。
わが子のお披露目が偶然にも叶ったのである。
「ベロベロ舐めまわしたいぐらい可愛いでしょぉ〜!」という親友のママのコメントに、夫は「わはは、そうですねぇ」と笑っていた。
なかなかいい光景だった。
このことを親友に伝えないの、と夫に言うと、「たぶん向こうから連絡くるよ」とのことだった。
男同士の友情はとてもドライである。
西海橋の手前でまあまあな車の渋滞に見舞われた。
長崎でも大人気を誇るお花見スポット・西海橋公園の周辺に車が続々と吸い込まれていく。
車窓から見える満開の桜を眺めているだけでお腹いっぱいになってきた。
そのままスルーしてさらに進んでいく。
結局、車の流れがほとんどない道を数10分走り、両脇に見える桜に感動しながら到着した。
陽気のわりに風が冷たいので、一応上着を準備してきたつもりだったがべらぼうに寒かった。
お世話になっている、西海市でデザイナーとして活動している方に挨拶をして、この界隈に詳しい方を紹介していただいた。
カフェひまわりというところで、74歳のオーナーと奥さんで4年前にオープンしたばかりのところだ。
昼時だったので、わたしはカレーを、夫はうどんを食べながら、オーナーとの話に夢中になった。
こんなときでもやはり子の存在は偉大だ。
初対面のぎこちなさなど一発で吹き飛ばしてくれる。
本当に、なんだろうこれは。
人間というか、キャラクターとして認識されているのかと思うほどだ。
話もそこそこに、ベビーカーを押しながら公園の跡地へ向かった。
けっこうな急勾配と足場の悪さで、これは抱っこ紐のほうがいいのではと途中で切り替えたが、ギャン泣きされてしまったので仕方なくベビーカーで続行することになった。
西海楽園に隣接していた観光ホテルも含めると、そのほとんどが廃墟である。
よく一般公開に踏み切ったなぁ、と夫と感心しながらゼイゼイ歩いた。
ややすると、記憶に残っていた施設の一部や仏像がわずかながら残っているエリアに到着した。
「うおおお」
テンションがあがり、夢中でカメラのシャッターを切った。
そのあいだ夫に子を預ける形になって申し訳なかったが、とにかくザクザク歩いて回って撮りまくった。
一般公開されているのは、表向きは「化石の森」というところだ。
細かい説明は省くが、採石業にも携わっていた地主が隆起地形を整えて形になったところらしい。
実際はそこにたどり着くまでがとことん廃墟で、わたしにしてみれば道中が見どころだ。
記憶にしっかりと色が戻ってきたところで満足感を感じ、イベントで設定されていた全行程を歩き終えることなく(最後の区画は長尾城跡地で、トレッキングエリアだったからというのもある)来た道を戻った。
ベビーカーを時折抱えて歩いていた夫とともに体力はやや削られてしまったが、お互いに面白い経験ができたように感じる。
その後も同じカフェに立ち寄り、報告がてら西海楽園の話をした。
色々と面白い話が聞けて、当時の写真も観ることができた。
B級スポットといえば簡単だが、どんな場所にしろたぶん多少のドラマや哀愁を含んでいる。
それが時間とともに熟成されて、魅力的な色を放つのだろう。
カフェを含めてとても良い場所だった。できればまたお伺いしたいものである。
帰宅ルートは少しだけ運転をした。
「ビシソワーズが食べたい」という理由で卸団地の「だんち菜々」へ。
地元生産者の気合の入った生鮮食品がならぶお店だが、わけあり野菜などがたまに破格で売られていることがあり、わりとわが家のお気に入りとなっている。
今回はジャガイモ2kgを130円、キャベツ2玉を60円で購入することができた。
どうするんだキャベツを。
ロールキャベツ以外に良いレシピはないか。できるだけ簡単なやつで。
そのあとはわたしの突発的ローストビーフ欲に付き合う形で、トライアルで牛肉ブロックを購入。
ワイワイ貿易に寄り、オタク惑星公開収録を覗きに行く。
ちょうど終わったところだったが、主催の女性とそのお子さんとお話ししつつ戯れることができ楽しいひと時を過ごした。
ものすごく関係者な雰囲気を醸し出していたが、夫はアニメを観ない(知識としてちょびちょび仕入れている)しわたしはニワカだ。
それでも「好きなもの」にみんなで熱くなる空間はとてもワクワクする。感化されやすいのかもしれないが。
家に帰るや否や、わたしは子を風呂に入れて身辺を片付け、夫は料理に取り掛かるというスピーディーなプレーを見せ、1時間後にはご覧の食卓を囲むことができた。
家に帰るなりローストビーフ、ビシソワーズ、酢もつを夫が。というのも昨日の話でして、わたしはまだその夢から醒めていないのでございます。#夫めし
幸せすぎて昼間の記憶が薄れてしまう。
今日あったことを語りながら、21時を回ったところでお互い眠くなってしまい、健康的すぎだろうと笑った。
【記事を書かせていただいてます】
【日常あれこれ】
ブログを更新しました。わたわたして1日遅れてますがマイペースにやっていこうと思います。宜しくお願いします。https://t.co/G78o8ZI3G6
— chirolpakutiaji (@chirol1660) 2019年3月30日