すこしだけタコに優しい世界
何度も書いているが、うちの猫は人間好きだ。
猫は、寝ていると必ずと言っていいほど顔もとに寄り添ってくるのだが、ときどきその毛にうもれて窒息しそうになったり、口元から生えてる髭(われわれの中では光ファイバーと呼ぶ)がくすぐったくて眠れなくなってしまう。
そんなときは猫のかわいさよりも保身に走ってしまうことがある。
両腕で猫をがっちりホールドして、自分にとって都合のいい位置に組みしだくのだ。
ほぼぬいぐるみを抱きしめて眠る格好と同じと言っていいほどなのだが、猫はだまってそれに従っている。
朝、その話題になり、夫と「本当に珍しい。うちの猫は“くみ猫”だ」と話していた。
なめ猫、キメ猫に続いての、くみ猫である。
母が子に会いたいという。
1ヶ月ぶりで天気もいいので、どこかお出掛けしようとなった。
先日動物園デビューを果たしたので、どうせなら水族館も行っちゃおう、と提案したら、二つ返事で了承された。
ぱたぱたと支度をして、母と妹と現地で合流する。
まずは腹ごしらえを、ということで、パールシー施設内にあるイタリアンレストラン「コスタ九十九島」で食事をした。
子はベビーカーのままで座席にすわり、わたしたちがガヤガヤと話すようすを眺めていた。
母はドール作家をしている。
今週で2000号を迎えた佐世保のフリーペーパー・ライフさせぼと同じ年数ぐらい一筋で創作を続けている。
わたしのライフイベントにもたびたびドールの贈り物をくれた母が袋を取り出し、プレゼントだというので中身を見ると、女の子ドールと、黒猫のピンバッチが入っていた。
それぞれ、子とわたしに、ということだった。
母は「ドール教室の生徒さんからは、メイちゃんとまっくろくろすけみたいねって言われちゃったわ」と笑う。
「かわいいけど、まだ早いよ〜」と言いつつ、子の側にあてがってニヤニヤしたり、ベビーカーに取り付けられそうな場所はないかと探したりした。
ランチメニューを勧められたが、がっつりパスタとピザを味わいたいということで各2種類ずつオーダーしシェアする。
母はいつもよく食べるわたしのために多く残して、載っていた皿ごとよこしてくれる。
近況や、主に子の話に花を咲かせながらパクパク食べた。
そのあいだ、子はほとんどをベビーカーで過ごしていたが、食事の後半はぐねぐねと身をよじらせていた。
さすがに退屈だろうと思い、膝上に抱きかかえる。
平日とあって、客足はまばらだった。
わたしたちのようなグループ客は、お店の隅にいた、おそらく食事休憩中であろうコンベンション関係ぐらいだった。
水族館のロゴが入った上着のスタッフとスーツの男性が数人。
心の中でエールを送った。
デザートまでしっかり食べ終えたが、子はご機嫌だった。
みんなで子に「ありがと〜」と伝える。なんだかお地蔵さんに旅の無事のお礼を伝えているかのようだ。
お会計場所へ向かい、店を出る。
そのままの足で水族館へ。
途中、九十九島の豊富な生態系を伝える施設「ビジターセンター」のまえを通る。
受付上の壁には、布絵本サークルのご婦人たちが手がけたというリアルなウミアメンボの布人形がデカデカと飾られている。
ここの施設の良いところは、生き物をデフォルメではなくありのままの良さをガツンと教えてくれるところだ。
結果、子どもウケする可愛げよりも、生き物に対する情熱によるガチ感が優先する。
展示も本気すぎて、もはや誰向けなのかわからない。
Facebookの公式アカウントに関しては、前書きなしでイモムシの動画をアップしたりする有様だ。
ときどき驚かされるが、スタッフさんの愛あふれるテキストを見ていると、そんな彼らのフィルターがかかってイモムシも可愛く見えてしまうので不思議だ。
そんな魅力的なスポットを言葉で説明しつつ、水族館の中に入る。
妹1曰く、訪れるのは8年ぶりだという。
ウミガメとタマカイの2大ベテランに迎えられ、魚の漢字クイズに盛り上がり、イルカの親子に感動し、クラゲドームで謎の撮影大会が開かれたりした。
わたしが手にしていた一眼カメラはスマホにボロ負けだった。
これは完全に撮り手のスキルによるものである。
終始ベビーカーでのルートを歩いたが、とてもバリアフリーな施設だということに初めて気がつく。
どこへ出掛けるにもそうだが、二本足でしか行けないエリアというのは意外にも多い。
「そういえばここ、階段だけだったー」と立ち尽くしてしまうこともザラだ。
視点が変わるとはまさにこのことかとしみじみと実感した。
展示をひととおり見て回ったあと、水族館のスタッフによる手作り感あふれるゲームでもりあがった。
ワニワニパニックのセルフ版で、一人がタコ役、もう一人がウツボ役になり噛まれた回数を競うゲームに息が上がるほど没頭した。
ワニワニパニックではワニの敵はハンマー(人間)だが、このゲームではタコの敵はウツボだ。
そんなリアルな弱肉強食の世界が味わえるゲームだ。
しかし、お手製ということもあり、ややウツボのぬいぐるみがタコに噛みつきにくい設計になっている。
タコのイラストも、挑発的なやんちゃスタイルである。
すこしだけタコに優しい世界だ。
そしてウツボに噛み付かれたはずのタコは、絶命することなく再び巣穴から飛び出してくる。
フェイントもかけてくる。
ほんとうに平和だ。
ちなみにこのゲームは、判定人が1人必要となるため3人でのプレーが必須だ。
水族館をひととおりまわり、お土産ショップへ向かう。
シーラカンスの茶こしと、夫と子のTシャツを衝動買いしてしまった。
すでに当日の航海スケジュールを終えた遊覧船の待合室で飲み物を片手に談笑する。
母の創作活動のこと、夜勤明けの妹1の仕事の話、子の話(もうちょっとアンタ気を遣いなさいよ的な話)など、
女3人集まれば話題が尽きることはない。
わたしはなぜか喉が渇いているのに、振って飲むタイプのゼリー飲料を買ってしまい少し後悔した。
なんとか液体に近づけようと、わたしがしゃかしゃかと缶を振る切ない音が響く。
すぐ側では、九十九島の風景を上空から捉えた映像が壮大なBGMとともにずっと流れていて、他愛もない話がなんだかおおごとのように感じられて少し面白かった。
それぞれの家の時間にあわせて、その場で解散した。
夜は夫のいるクーシェへ子と向かう。
やはり夫の友人のカメラはいい。うらやましい。
お店のママはあいかわらず元気で、ずっと子に声を掛けてくれていた。
久しぶりに食べるハンバーグセットが美味すぎて写真を撮り忘れる。
もともとは喫煙オッケーなカフェなので、子を連れてきているとやはりすまないと思う。
夫が一段落したタイミングだったが美味いもの食べたさにオーダーしてしまったことに若干の申し訳なさを感じつつ、胃に収めそそくさと店舗を出た。
なんだかんだ夫婦互いに動き回った1日で眠かったので、お風呂をパスしてそのまま寝た。
【記事を書かせていただいてます】
【日常あれこれ】
スタンプになってた。すごく嬉しいし我ながらかわいい。#mokodoll #佐世保 #handmade #手作り作家 #ハンドメイド #人形
かわいい。#mokodoll #佐世保 #handmade #手作り作家 #ハンドメイド #人形