スタンプのみで返事をする63歳
この日は父のバースデーだった。
先日、嬉野で一足早いバースデーディナーを共にしたばかりだが、一応当日だいうことでお祝いのメッセージを入れておくことにした。
「ハッピーバースデー!」とカラフルな絵文字たっぷりに文章をしたためる。
そのあとに続くのはやはり年齢だが、はて、父の年齢っていくつだ、と手が止まってしまった。
父や母の年齢になると、わざわざ具体的な数字を全面的に前に出してお祝いをするということが少なくなる。
「もうこんな歳を祝っても仕方がないよねぇ」という空気を感じるのだ。
そこで還暦ダネ!という会話をしてから何年が経ったかを思い出そうとしたが、いかんせんあやふやだ。
これだけ親の年齢に関心がないというのもなんかあまり良くない気もするが、わが家ではこれがデフォだ。
たぶん、わたしは、少なくとも。
というわけで、バースデーメッセージを送る前にまず始まるのは、姉妹間で親の年齢を確認し合うところからだ。
父って何歳?という会話がほぼ毎年繰り広げられる。
ひどいときは、誕生日いつだったっけ?となる。
一応主張しておくが、父のことは大好きであるしなんら不和なことはない。
しかし今年に限っては、姉妹間での確認の必要がなかった。
たまたま先に開いたフェイスブックの4年前の投稿画面が出てきて、その中に父のバースデーの話題があり、「郷ひろみより1歳上」と書いてあったのだ。
4年前のわたしと郷ひろみのおかげで、父の今年の年齢がわかった。
こうして無事に3人とも父にメッセージを送ることができたわけだが、なぜか妹1にだけ返事で送ったスタンプのキャラクターがうさぎだった。
厳密には、目をウルウルと潤ませて期待の眼差しを向けるうさぎだった。
ちなみに、わたしと妹2はクマが淡々とおじぎをするだけのものだった。
そもそも返事がスタンプだけというのがどうしたものかという感じだし、おじぎって他人行儀すぎるだろうという話なのだが、妹1だけなぜわれわれと違うのだろうか。
そんなに大差ないはずなんだけど、と妹1は訝しんでいたが、おそらくわたしに続き、結婚&孫をタノシミニシテイルヨ的なプレッシャーをかけてきているのだろうという結論に落ち着いた。
妹1は「いろいろと頑張らねば」とコメントしていた。
お義母さんは、毎日のように子の成長に感動し離乳食の食べっぷりを褒め、つかまり立ちの勇ましさに感嘆する。
その反応を子もしっかりキャッチしているようで、近頃は嬉しさを表情や動作で返事をするようになった。
雨でしかも家にこもりがちなので、筋トレで気分転換に努めることにした。
仰向けに寝転がり、両足を揃えた状態で真上にピンとあげ、ゆっくりと床ギリギリまで降ろしてキープする。
その後またゆっくりと真上まであげる、というやつなのだが、
わたしの動きを嗅ぎつけた子が満面の笑みでハイハイをして胴体にダイブしてきた。
笑って崩れそうになったが、むしろ負荷があったほうがいい、と気持ちを切り替えて続行したが、力が入らずどうにもダメだった。
わたしにまともな筋肉がつくのはいったいいつになるのだろうか。
夜は、会合に出掛けていた夫を迎えに行った。
今にも眠りの世界に飛んでいきそうな夫とその日あったことを話しながら、わたしも引きずりこまれるように眠ってしまった。
眠る直前まで観ていた千鳥の「相席食堂」で、ユースケに改名したダイアンの西澤さんが頑張っていた。
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