ヤマモトチヒロのブログ

佐世保在住フリーライターです。育児日記に混じって、地元佐世保の歴史や文化、老舗や人物について取材撮影執筆した記事を掲載しています。

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子の運が良かったのでホッとした親心

年が明けた。

今年は子年なので、良いスタートの年となるそうだ。

新しいことを始めることや、転居転職にも最適らしい。

しかし、第二子でお腹が大きくなってしまった身体をさんざん甘やかしていた結果、自宅に関しては大掃除すら終わっていない状態で新年を迎えることになってしまった。

これではあんまりなので、部分的に掃除を頑張って自分を納得させることにした。いまのところ、台所のみ縁起がいい。あとはタタリ場と化している。

 

子の運動能力が日に日にあがっていく。

高い山に挑み続ける登山家のごとく、家にあるものを使ってさらなる高み(物理的)へと向かっていく。

その危険を顧みない貪欲さには呆れてしまうが、成長が嬉しいことも事実だ。

子は、はじめのころは子ども用の椅子などを使っていたが、次第に両手で机などにつかまりながら、横棒状のものや面積の狭いものまで踏み台にするようになった。油断も隙もあったものではない。

あまりに危険な場合はすぐさま止めに入るが、できるだけ遂行を見守りたいという気持ちもあり(止めればその分ヒートアップされてしまうからというのもある)、複雑だ。

特にパートナーが側にいる場合、そのあたりの認識を共有していないと「なんで止めないんだよ」とモヤッとしたりされることもあるので注意が必要だ。

 

夫が職場の人たちと初詣に行ってきたらしく、家族分のおみくじを引いてきた。

見てみると、夫とわたしは小吉で子は末吉だった。

ざっくり内容を要約すると、「現状維持。あと安産です」だった。よし、がんばる。

末吉は、わたしは残念賞のように思っていたが、年の後半から運気があがってくるため小吉より良いとのこと。子の運が良さそうでホッとした。これも親心か。

また、ほかにも誕生日くじや安産のお守りももらったりして、夫が神の使いになって至れり尽くせりのようになってしまった。

 

ここまで書いて、文字数が777だったので気持ちよく終わろうと思う。

クリスマスはビエネッタを食べるための大義名分

晩ご飯の離乳食にトマトリゾットをつくった。

しかし冷ますのが足りなかったようで、子が熱がって泣いてしまった。

全力で謝りつつ、もう一度慎重にリゾットを冷まし口に運ぼうとすると、

「怖いのでいりません!」と無言の訴えをされてしまった。

こんなに子の感情が言葉のように伝わってきたのは初めてで、わたしはよほどのことをしてしまったのだろうと反省してしまった。

しかし、子の必死の身振りから次々と「あんたの飯なんか、信用できるかぁー!」「ふん!いくらフーフーしたって無駄じゃ!」とセリフが浮かんでくるので、いけないと思いつつ笑いがこみ上げてきてしまった。

しっかりと冷めるのを待ってから口へ運ぶと、おそるおそる食べてくれた。

「本当に熱かったね、ごめんね」と言うと、やや口をへの字にしてウンウンと頷いていた。

 

仕事終わりの夫に、「街がクリスマスでなんかいい感じだからお出かけしようよ」と誘われた。

ちょうど子の晩ご飯を済ませたところだったし、すっかりご機嫌も直っていたので喜んで身支度をして家を出た。

クリスマスの終わりかけ、年越し正月ムードへのグラデーションに彩られた五番街をうろつく。

この、街がそわそわしている雰囲気がとても好きだ。

今日はもともと、夫に「ビエネッタ」を買ってきてくれと頼んでいた(クリスマスはこれを食べる良い大義名分なのだ)。

しかし、せっかくなら他にも好きなものをどうぞといった具合で服やら靴やらを見て回ることになった。

わたしにはお出掛けとお買い物、食いしん坊の子には離乳食祭りと、家庭で一番頑張っている自分を差し置いての夫のクリスマスサービスに喜びを感じつつ、

「きみは欲しいものはないのかい」と尋ねると、高スペックなカメラやガジェットの名前が飛び出してくる。

これはわたしの独断では決して買えないので、サプライズ不可なのが難点だ。

それをわかってなのか、毎回この質問をすると似たようなやりとりになる。

 

なので、話は逸れてしまうが、今年の夫のバースデーでは、サプライズ感を出したいがためだけにわたしの好みをガンガンに押し付ける形でお祝いをした。

直筆の手紙と、撮りためた夫の写真の中から厳選した写真集である。

受け取った夫はさほど驚きはしていなかったし、「自分の写真集をもらっても」といった具合だった。

たしかに手紙ならともかく、わたしも自分の写真をもらったところでどういう顔をしていいかわからない(笑えばいいのか?)。

そんなわけで、夫にサプライズを仕掛けるのには彼の予想を大幅に裏切った展開でなおかつセンスが良くてコスト的に無理がないものでなければいけないのだ。

まだまだ改善できる余地はある。

来年の自分に期待しよう。

 

五番街をぶらぶらし、GUで面白い色の靴とロングトレーナーとスカート、荒ぶる髪を鎮めるスプレーを買ってもらった。

ついつい立ち寄った桃太呂で長崎豚まんを衝動買いし、獲物を手に入れた野獣のごとくフードコートで一瞬で食べ尽くした。

そしてお目当てのビエネッタも、バニラとティラミスの2種類を買ってくれた。

 

家に帰り、子が眠っている隙を見て大本命のバニラ味をうまうまと食べた。

夫はビールとともに1口食べて、「ぅああまっ」とそれきりフォークを置いた。

わたしは夫用というていで多めに取り分けたぶんをさらりと平らげた。

やはりビエネッタの魔力といえばパリパリチョコだ。

バニラの存在はパリパリチョコが適度な隙間を保つためにあるといっても過言ではない。

パリパリチョコを口の中で味わっているときにはもう次の1口を欲している。なにか危険な成分が脳内で出ている気がする。

さすがに1人でティラミスまで完食できそうもないので、年末年始ゲストへのふるまい用にしようと夫に提案した。なんて平和な提案だろう。

しかし、箱から出してしまえば原型がわからないのをいいことに、少し手を出してしまいそうな予感がしている。

それだけに、年末年始の魔力は恐ろしいのだ。

365日、彼らは愛宕山に登る【佐世保相浦】

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“相ノ浦富士”の愛称を持つ愛宕山(あたごやま)


眠い。

朝6時。いつもなら布団でスカスカ惰眠をむさぼっている時間だが、この日は登山の約束をしていたのでなんとか這いずり出なければならなかった。

 

365日、晴れの日も雨の日も風の日も雪の日も山に登る人たちの集まりにちょっと参加することになったのだ。

半ば勢いでOKしてしまったことを悔やみつつ、のっそりと外に出た。

連日続いていた攻撃的な真夏日も朝だけは休戦しているようで、山鳩の声が心地いい。

穏やかな涼しい風に吹かれ、少し眠気が覚めた。

 

古びた商店街の脇に車を停める。

本当にここであっているのか不安になったが、歩くこと3分足らずで登山口に到着した。 

長い登りも大きな自然公園もなにもなし、ショートカット登山口である。

「そしたら、行こうかねぇ」

70歳近くのおじいちゃんおばあちゃんに出迎えられる。

半袖スニーカーの、まるでその辺をウォーキングするかのような出で立ちの彼らは、会話もそこそこに登山ルートをぐんぐん登り始めた。

えー、準備運動なしでスタートですか。というか、すごくラフな格好なのですが。わたしなんかトレッキングシューズ履いてきたというのに。なんだかすごく場違いじゃないか。

 

わたしは足がつってしまうのが怖かったので、ちょいちょいストレッチをはさみながら歩を進めた。

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「ほんとに毎日登ってるんですか」

そうそうに息切れしながら聞いてみる。

 

「まぁ、せいぜい標高259メートルしかないからね。30分もあればのぼりきれるよ」

 

マジか。

往復で1時間、しかも住宅エリアから徒歩で近い。これでは普通のウォーキングやジョギングと変わらない感覚だ。

だから彼らは毎日でも登れるのか。すごい。

「毎朝登山してます」ってどんなエクストリームモーニングだよ。かっこよすぎるよ。

 

しかし、朝の日課というにはそれなりに石段がきつい。

10分でもうギブアップだ。

けっこう頑張ったけど、やはり地の利に詳しい彼らには到底及ばないのだった(原因はそれだけではない)。

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悲しいことに、おじいさんを追い抜くことが出来ない

親切が具現化したかのようなレンタルステッキにちらと視線がいく。しかし若者枠で呼ばれたというプライドにより、見なかったことにしてしまった。

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「ご自由にどうぞ」とレンタルステッキが。誰が置いて行ったのか

毎日人間に染まりまくっているからか、この山はとても人に優しい。

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落し物も、優しい人がそっとわかりやすくしてくれている

 

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手作りの番号札。もしものときに便利なのだそう

手作りの番号札がどのような場面で役に立ったのか聞いてみたが、

「以前下りんときに石で足ば破かしたひとのおってからね、救急車ば呼ぶときにこの番号ば言ったけんが助からしたとさ」

たぶんこう言ってたとおもう。

山を降るときに、石が足に貫通した人がいて、救急車を呼ぶときにその番号を伝えたことで位置がすぐに特定され、大事に至らなかったということだ。

なんだその怖い石は。ほんとうに石だったのか。もののけの類じゃないのか。

 

話しながら登っていたが、わたしは手すりにつかまっていないともうダメだった。

登山道に手すりが設置されているなんてもはや登山体験ですかと言いたくなるほどの衝撃だったけど、

もっと衝撃だったのは手すりの大部分に蜘蛛の巣が張っていたということだった。

すなわち誰も使ってない。どんだけタフなんだご老人方。

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やー、もう立派な登山です

 

(わたしがみなさんの足を引っ張ったので)登ること45分、やっと頂上に到着した。

頂上には小さな広場と、さらに上には祠があった。

景色に感動するあまり、写真を撮り忘れた。

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みなさん景色より雑談に夢中だ

わたしがご一緒した老夫婦の前にすでに到着していた人がちらほらいたがほぼ全員ご老人だった。

「若い人のおる、珍しかね」とリアクションしつつ、病院の話、孫の話、健康の話、テレビの話といろんなトークに花を咲かせる。

登頂を終えた爽快感と、おしゃべりというストレス発散が毎日長続きする理由らしい。

高齢者で一人暮らしの方も多く、こうしたコミュニティが彼らの生きがいになっているそうなのだ。

一緒になって楽しくワハハと雑談していると、おじいさんが「あっ、ムカデのおるよアンタ!」と言い、わたしの肩に這っていた巨大なムカデを素手で捕まえ遠くへ投げた。

またしばらくすると、おばあさんが無言でジーンズを履いていたわたしの太ももあたりをベチンと叩いた。

「アブのおったよ」

わたしのジーンズは、潰れたアブから噴出した私の血でべっとりと濡れた。

その後おばあさんから虫刺されの薬を塗ってやると言われ、木陰にかくれてマンツーマンでパンツをさらすはめになってしまったのである。

 


通算1000日以上登り続けたレジェンドと歩く

通算1000日以上、この山を登り続けてきたというレジェンドの初老男性が遅れてやってきた。

3年ほどずっと皆勤賞というわけだ。

毎日の登山でがっちりと鍛え上げられた彼は、皿回しサークルの会長を務めるなど、健康づくりには余念がないそうだ。

そんな彼に先導してもらう形で山を降りることになった。

とはいえもと来た道を戻るだけだし、ゆるく雑談でもしながらのんびり帰ろうと思っていた矢先。二股に分かれた道でレジェンドが立ち止まった。

「じゃ、せっかくやけん別の道ば行こうかね」

まさかの別ルート下山だった。

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すぐさま降りて帰りたかったが、反対側の出口を教えてやると言われついていくはめに

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スダジイだよ、と教えられた。板状の根はそのまま「板根」という。コウモリの羽みたいだ

どこまで行くのだろう。下っ腹が痛くなると思って、朝ごはんを抜いてきたのがアダとなったらしく、体力がレッドゾーンに突入してきた。

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植物の名以外、多くを語らぬ背中

しばらく歩くと、異様に大きいバナナの木が目に飛び込んできた。

まだ完熟には程遠い状態ではあったが、青くてちいさいバナナがかなり上の方で房を揺らしていた。 

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後日調べてわかったが、栽培していた主はすでに他界していたもよう

なんとこのレジェンド、自宅が登山口のすぐ近くだった。

そりゃあ日課にもなるわけだ。

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自作の眼鏡橋をなぜか見せていただいた

 

 

ちなみに反対側から見るとこんな感じだ

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相浦川をはさんだ対岸からの景色

ザ・田舎の原風景といったたたずまいだが、後方をちょっと歩くとこの町のメインストリートに出る(エレナとかココカラファインとかタイヤ館とかあるんだぜ!)。

川の中につくられた飛び石をハラハラしながら渡っていく頃には、すっかり日も高くなっていた。

額に汗がにじみ頬を伝っていったが、突き抜けるような青空が綺麗でしばらく見とれていた。

 

365日、この山に登り続けるご老人方にとっては見慣れた光景かもしれないが、わたしにとっては新しい故郷の景色として刻みこまれたわけである。

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たぶん成人式で大暴れしてた車だ

 

 

 

【記事を書きました】

★全国の観光情報メディア「SPOT」にて佐世保を発信させていただきます! travel.spot-app.jp

 

デイリーポータルZ「自由ポータルZ」で入選しました。めちゃくちゃ嬉しくて鼻血が出ました。

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デイリーポータルZ「自由ポータルZ」もう一息でした。めちゃくちゃ嬉しいです。佐世保にお立ち寄りの際はぜひ佐世保玉屋へ!

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佐世保市のローカルメディア「させぼ通信」で書かせていただきました。

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 ★好きです、西海楽園フォーエバー。 

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意識を変えてプルーンと小魚を買う

毎日のように出来ることが増えて、子どもは本当にすごいとおもう。f:id:PKyamamoto:20191221113223j:image

食事はいつも戦いだ。最近はわたしに根性が足らず、ついついパクパク食べさせて終了させてしまうのでこりゃあんまり良くないなという気がする。

また、両親から「食べ物を粗末にしない」という教育をしっかり受けてきた立場としては、子の奔放な食べっぷり(遊びっぷり)に若干モヤッとしてしまう…ここはわたしの母レベルの成長にも繋がる勝負どころである。

とにかく、好き嫌いがほとんどなく全身で食事を楽しんでくれているだけで良しとしよう。

 

アンタッチャブルが10年ぶりに復活して夫が涙したり、気づかぬうちに第二子がお腹に登場していたり、周辺がバタバタしていたり梅宮辰夫さんが亡くなったりと、身の回りの変化がすさまじい年末だった。

妊娠中の影響なのか体調や気分のアップダウンも激しく、天国のあとには必ず地獄がくるみたいなガッタガタな状態が続いている。そんな中でも夫家には助けられてばっかりだ。いやはや。

 

夫が買ってきてくれたマカダミアナッツチョコが美味しすぎて1箱を1時間もしないうちに完食してしまった。

「妊娠中は子どもに養分を与えているので、いくら食べても0kcal説」をひそかに信じて好き放題な食生活をしていたわたしだが、さすがにこれはまずかったようだ。

後日検診を受けた産婦人科で血糖値の高さを指摘され、謎の無敵モードが終わりを迎えることになる。

帰りにドライブがてらスーパーに行き、種なしプルーンと片口鰯の干物を買ってむさぼった。

食生活への意識の変化がもたらしたチョイスだ。これから健康志向になるのだ。人間というのはとても単純なものである。

しかしその夜、久しぶりに外出した勢いでコンビニ揚げ物を買って食べてしまった。

しかもチョイスは揚げチーズドッグとラザニアブリトーだった。

どうやらチーズに飢えていたようだが、あとから考えるとあまりにひどい。

血糖値を考えるなら、野菜なりマロニーちゃんなりを茹でてポン酢で粛々と食べればよかったのに。

やはり抑制しようとすると反動がくるものなのだろうか。

今後の課題は血糖値とイライラを改善することだ、と書くとなんかそういう歳なのかなと少しショボンとなった。

 

味のある標語看板は五右衛門風呂ワールドに通ず【佐世保:古賀住建】

いつも前を通るたびに気になっていたものがある。

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佐世保市天神2丁目。道は狭いが意外と交通量が多い

標語の看板だ。

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看板の下にはババンと会社名が書き記されており、地域の子どもたちや町内会有志がつくったものではないことがわかる。

 

標語は毎月書きかえられるうえ、決まって5・7・5の句だ。

時事ネタや政治へ一言などタイムリーなものからストレス社会を生き抜く人々を労るメッセージまでジャンルも幅広く、わたしは毎回といっていいほど感銘を受けてしまう。

ちょうど道のカーブ付近で見えてくるので、減速ついでにチェックするのが習慣となっている。

 

今回はちょっとじっくり眺めたかったので、少し駐車させていただくことにした。

2019年の今年を締めくくる12月は、

「宝くじ 当たると信じ 夢みるか!」だ。

 

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見る側のメンタル状態によって、「一緒に夢みようか!」とも「本気で夢みるつもりなのか!?」ともなる

正面に立ってみると、なんともいえぬ気迫を感じる。やはり手書き文字のパワーはすごい。

もう少しあたりを観察しようかと、目線を移したその時。

看板の隣ではためくのぼりに思わず目を奪われてしまった。

 

ん?

 

…んんん!?!?

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大好き五右衛門!?

どういうことなのー!!

 

ルパン三世から洋麺屋まで、五右衛門と名のつくものはもれなく好きなわたしだが、これはあまりにインパクトが強すぎるではないか。

わたしは標語看板からサッと身をひるがえし、奥にある「有限会社 古賀住建」の扉をノックしたのである。

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日本の西端で五右衛門風呂を売る会社

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入る前にチラ見、良い

 

―こんにちは!おじゃまします。

笑顔で出迎えてくれたのは、社長の古賀秀之さん(54歳)だ。

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お忙しいところホントすみません!

―あの、五右衛門っていったいどういうことでしょう。

「えっ。ああ、五右衛門風呂ですか」

 

ーわわわ、売ってらっしゃるんですか!?ちょっと詳しくお聞きしたいです。

「はい、いいですよ」

 ―やったー!

 

わたしの頭の中は一気に五右衛門風呂に占拠されてしまった。

大丈夫。標語は逃げないから。

 

思わぬ収穫に舞い上がったわたしの耳に、どこからか鐘の音がグヮングヮンと聴こえてくる…。

今思えばあれは五右衛門風呂の音色だったのかもしれない(妄想だよ)。

 

実物のある場所を教えていただく。

すっかり見落としていたが、大好き五右衛門のぼりの真下にあった。

 

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長州風呂(丸型20)。口径は73センチ深さ62センチ、190リットル入る

 

五右衛門風呂(長州風呂)だ。

ここでは五右衛門風呂と呼ばせていただくが、正式には、薪を焚く下の部分のみが鋳鉄製のものが五右衛門風呂、写真のようにすべて鋳鉄製のものが長州風呂というらしい。長州というぐらいだから山口県にゆえんがあるのか。

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五右衛門風呂。浴槽がほとんど木桶だ

 

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対して長州風呂。全体が鉄釜になっている。煙突もあるしこちらの方がすぐに温まりそうだ

ずっと屋外で展示されていたためか、五右衛門風呂の表面には錆がついている。

これは何のコーティングも施されていない生地タイプというそうだ。

水洗いや油の塗布、乾燥などの防錆処理が必要になるが、使い続けるうちに人の身体から出る脂で皮膜がつくられ酸化防止になるのだとか。はひー。すごい。

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料理が趣味の夫から、「中華鍋を油で育てていく感じかな」とコメントをいただいた。いったいなんだそれは。育つのか。

はじめから防錆仕上げが施されたタイプ(ホーローなど)もあるそうだが、五右衛門風呂本来の入浴感を味わいたい愛好者はこちらをチョイスするとのこと。

五右衛門風呂本来の入浴感とは。

なんでも、肌触りの良い柔らかいお湯で身体の芯までポッカポカなのだそうだ。

 

―実際にお湯に入れたらいいなって、思うんですが。お試しできますか。いくらでも待ちますし実はこの服の下は偶然にも水着です。

「うーん、ぜひともと言いたいんだけど。ここにあるのは見本だけなので、ごめんなさい!」

ーでは、気分だけでも。

「どうぞどうぞ」

 

おそるおそる入ってみる。

大人1人がすっぽりおさまるサイズだ。体格のいいひとならぎっちり。子どもなら2人まではギュッと入るかもしれない。

昔の人は体格も小さかったそうなので、もっと余裕があったのかもしれない。

縁の部分とか底とかすっごく熱そうだが、意外と熱くないらしい。

そうか、この下には本来、底板があるんだもんな。足よ、木の感触を思い出すのだ。

頭の中で必死にあれこれと想像を膨らませてみる。

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しかし身体が温かくなることはなかったし、バランスを崩すと斜面へ転げ落ちてしまうので風呂釜と一蓮托生モードだった

 

時間は日没近く。同行してくれた古賀社長にも寒い思いをさせて申し訳ないので、事務所に戻りお話を伺うことにする。

お茶をいただき、ようやく身体が温まった。ありがたい。

 

それにしても西の端の地佐世保で、どうやって五右衛門風呂を売っているのだろう。

まずはどんな会社なのかを知ることからだ。その成り立ちについてうかがった。 

 

 

昭和3年創立。いまは奥さんと二人三脚で経営

佐世保市の老舗建材店「有限会社 古賀住建」 の流れは、昭和3年から。

「古賀商店」という屋号だったそうだが、醤油屋もやっていたらしい。

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昭和6年当時。「マル」に古賀の「古」の屋号がかわいい((有)古賀住建さまより提供)

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昭和6年当時((有)古賀住建さまより提供)


その後建材店を経て移設、いまに至る。現在は奥さんと二人三脚で経営している小さな会社である。

「子育ての秘訣は夫婦仲だよ」とアドバイスをくれた古賀社長。家族仲は好調のようだ。 

 

現在は電気、ガスや水回りなどの販売施工を行っている同社が五右衛門風呂を商品のラインナップの1つに加えたのはおよそ17年前。

ちょっと珍しいアイテムが欲しかったというシンプルな理由だ。

五右衛門風呂に関しては販売のみで、施工は業者が行っている。

 

 

五右衛門風呂のカタログは昭和感があっていい

取り扱い中のカタログを見せていただいた。

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広島の歴史ある鋳造メーカー「大和重工株式会社」のカタログ。五右衛門風呂を製造する唯一のメーカーだ。昭和感のある表紙がすてき

 

ー意外と種類があるんですね。

「そうだね。直焚タイプからゴム栓付きの給湯タイプ、カンタン組立アウトドアタイプ、形も丸型とか小判型とか、サイズもいろいろだよ。あと、羽釜タイプもある」

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釜めしどんだ。鋳鉄製なので保温耐久性にすぐれている。贅沢な重量感が魅力

 

―ちなみに、どんなお客さんが購入されるんですか?

「旅館や民宿、キャンプ場、一般のご家庭もいらっしゃるよ。屋外でドーンと開放感に浸れるし自分で組み立てもできたりもするから、アウトドアやDIY好きな方が多いかな」

 

また、他に購入理由を伺っていくなかで興味深かったのは

  • 水中出産のため(鋳物の鉄分が溶出するため好影響?)
  • 震災時など、インフラが完全に停止しているなかでも使えるから

だった。

特に水中出産には驚いた。鉄分や遠赤外線といった健康へのプラス要素が期待されるのはわかるが、絵図がほんとに儀式そのものである。血行とかそれはもうギュンギュンで、母子含め風呂釜全体がこう、脈打つ生命なのだきっと。

 

 

 ーどのぐらい売れてるんでしょう?

「そうだね、北は北海道から南は沖縄まで、全盛期で2、30台ぐらいかな」

意外と多くて驚いた。ウン十万の世界なのに!決して安い買い物ではないというのに。

少ないとはいえ全国的にも販売店や通販があるなか、なぜわざわざ佐世保のここを選んだのか。

そのきっかけの1つは、2000年に立ち上げた自社サイトだった。

 

 

売れたきっかけは「サイトを見た」

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30代オーバーにはグッとくるかもしれない、手作り感満載のサイトだ


「当時、五右衛門風呂をネットで売り出そうとしているところはほとんどなかった。だから取り扱い開始と同時になんとかいち早くと、ネットに詳しい後輩を参考に、自力でワードの機能を使ってコツコツと作ったのが最初です」

ーおお、これはかなりの懐かしさ!味わい深いですね。

アクセスカウンター付きである。キリ番、踏み逃げというワードが脳の奥からボコボコと這い出てきたが一旦引っ込んでてもらう。

 

ーコンテンツの数がすごいですね。普通なら会社紹介とサービス内容のみでスッキリ完成しそうなものですが。

「後づけのものも多いんだけどね。こんな片田舎の会社なものだから、たくさん発信することはしなくちゃとおもって。とにかく勉強しまくって充実させたよ。特に五右衛門風呂は、ウチで在庫を見られるわけじゃないからどうすれば魅力が伝わるのかあれこれ工夫したよ」

 

たゆまぬ猛勉強とともに、徐々に成長していく五右衛門風呂コーナー。

f:id:PKyamamoto:20191215121334j:plain商品説明だけにとどまらず施行例、作り方、図面の開示や、

Q&Aコーナーまである。

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お客様質問コーナーかと思いきやまさかのクイズ形式だった

おかげで「とてもわかりやすい」と、遠方のひとからも注目されるようになり、販売へと繋がることもあった。

うんわかる。わたしも見ているだけでワクワクするもの。

「口下手なんだけど、書くのは好きなんだよね。嬉しかったのは、このページのおかげでおたくの人柄がわかった。安心して買えると言われたことだね。努力した甲斐があったよ」とにっこりほほ笑む古賀さん。

数々のコンテンツは、お値段以上の真心がふんだんに散りばめられているのだ。 

 

「そろそろ海外に向けたアピールもしていきたいんだけどね。広い土地があってアウトドア好きなひと多いだろうし」

ーそれは素敵ですね!英語版サイトつくっちゃいましょう。

「それがいかんせん、時間と体力がないんだなー!とほほ!」

 

 

自社サイト内に趣味のページをコッソリつくってしまった 

佐世保出身だが五島にもゆかりのある古賀社長。

若かりし頃は遠洋航海で日本一周を2回達成するなど、海の男の顔も持つ彼はイカ釣りの熱狂的なファンだ。

あふれる気持ちを抑えられず、とうとう趣味のページを自社サイト内にコッソリとつくってしまうという暴挙に出た。

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面白いことに、会社サイトより総アクセス数が5倍近く多い

忙しさの合間を縫って、仲間たちとイカ釣りイベントを開催したりとたいへん充実した釣りライフを満喫しているそう。
そんな社長のすさまじいイカ愛がこもったサイトは、イカさながらに見れば見るほど味が出る。

www5a.biglobe.ne.jp

 

 

歴代NO.1の入り心地を誇る五右衛門風呂は

ー社長はやはり、五右衛門風呂には結構たくさん入られたんですよね。歴代No.1とかありました?

「いやー、それが悲しいことになかなかチャンスがなくって。10年前、販売先のお客様からお誘いいただいて、家族総出で入りに行ったのがもう最高だったよ。薪で火を焚くところから始めて…あれは良い家族のコミュニケーションになるなぁって実感したよ」

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「やー、もうホント最高だったよ」を何回も繰り返す社長。金額や五右衛門風呂の性能以上の入り心地を実感したのだろう

 

―昔は一般家庭でも五右衛門風呂が多く見られたそうですね。

「そうだね。僕が小さい頃、おじさんの家で入ってたりしてたなぁ」

わたしの周囲でも、「農家の祖父母宅で入った記憶がある。とにかく熱くてしょうがなかった!」という声がチラホラ。現在でも、ガンガン高温に焚き上げて入るシニアもいる。

 

―今後は数も減っちゃうんでしょうか。

「売り上げもここ2、3年ですっかり減っちゃったしなぁ。価格競争、増税、不景気によるライフスタイルの変化…思い当たる節はたくさんあるけど、値下げはしないつもりだよ。僕のページなどで興味を持って信頼して注文して下さるお客様もいらっしゃるし、こちらも良いものを売ってるって自負があるから」
柔らかい口調で語りつつも、古賀社長の眼光は鋭い。

 

 

【本題】あの標語について

ーすみません、実はこちらが本題なのですが、会社の表にある標語について聞いてもいいですか。

「あっ、本題そこだったんですね(笑)あれは、会社の場所が分かりにくいとお客さんからの一言がきっかけで設置したんですよ。かれこれ15年くらい続けてるかな」

 

ーちなみにわたしのお気に入りは、「笑おうよ 脳勘違い するくらい」です。あれはどのようなお気持ちで書かれたのですか?

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数年前、夫から送られてきた画像。わたしはこれをきっかけにここの標語を知ることになるが、当時のわたしはネガティブだったので「オイオイ洗脳か!」と返してしまった

「あれは、ちょうど当時読んでいた人間学の本からヒントを得て書いたんだ」

大人になった今ならわかる。人間笑ってみると案外楽になるものだ。

内容はニュースや本、家族との会話からなど。ネタの引き出しは常備されているらしい。サイト内にも看板とは関係なく歌が大量に掲載されている。

ちなみに文字を書いているのは奥さん。なかなかな達筆である。 

標語はご近所さんにも好評で、わざわざ新作を見に来る人も多いという。

 

 

五右衛門風呂も標語も、人をあたためてくれるのだ

人の住まいに関わることは、その人のドラマを知ることでもある。

その価値は、お金だけでは決して計ることはできない。

五右衛門風呂も標語も、それぞれの形で人をあたためているのだと共通点を見つけたとき、小さな住建屋さんが長年この地からもたらしているものの大きさが分かった気がした。

 

それにしても、五右衛門風呂に入れなかった未練がまだ残りまくっている。

そんな気持ちを一句したためる形で成仏させたい。

「子のプール お湯を注げば 五右衛門風呂」

大変おあとがよろしいようで、いやはやである。

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大変お忙しい中、取材にご協力いただきました有限会社古賀住建さま、誠に有難うございました!


 

 

【会社情報】 

有限会社 古賀住建

佐世保市天神2丁目2677-1

0956-32-0776/0120-13-0776 

 

 

 

 

 

【記事を書きました】

★全国の観光情報メディア「SPOT」にて佐世保を発信させていただきます! travel.spot-app.jp

 

デイリーポータルZ「自由ポータルZ」で入選しました。めちゃくちゃ嬉しくて鼻血が出ました。

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デイリーポータルZ「自由ポータルZ」もう一息でした。めちゃくちゃ嬉しいです。佐世保にお立ち寄りの際はぜひ佐世保玉屋へ!

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佐世保市のローカルメディア「させぼ通信」で書かせていただきました。

sasebo2.com


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 ★好きです、西海楽園フォーエバー。 

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図書館には「公式キャラクター」というものがいたりする

2019年、わたしの地元にある佐世保市立図書館で公式キャラクターが誕生した。

 

名を「SABON(さぼん)」という。

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎SASEBO(させぼ)のSAと、図書(ほん)のBONで“さぼん”。港町佐世保らしいカモメのイメージ。胸元には市章、着ているセーラー服の襟は本の形。

本の妖精なので、性別はなぞらしい。

なお、後姿までバッチリ細かくデザインされている。

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リュックサックの柄は図書館のマークだ(図書館総合展ウェブサイトより引用)

こだわりがすごいし、用意周到であっぱれだとおもう。

着ぐるみ化まで待ったなしである。

 

読書と自学だけを行う場所だと思っていた図書館で公式キャラクターとは、とても意外だったわけだが、

あまりの完成度の高さとビジュアルの可愛さに「ンガワイィィィ…ギギギ!」と歯ぎしりしてしまったのは言うまでもない。

 

いやはやしかし、

公式キャラクターの誕生、とは。

児童室やお知らせ掲示板を賑わせたりしている、色紙を切り貼りして作られたウサギやクマと、果たしてどう違うというのか…。

 

などとモワモワしているわたしの耳に、佐世保市立図書館でお世話になっているベテラン司書(とても見目麗しいので、以下GL:グッドルッキングさんとする)さんの一言が入ってきた。

 

GLさん「実は全国の図書館に、チラホラいるんですよ…公式キャラクター」

 

なんだと。

それは、この目で確かめてみなくてはなるまい。

日本における八百万の神々のごとく、地域や企業などを代表するマスコットキャラクターたちが各地にはびこっているわけだが、

図書館もまた例外ではなかったということか。

 

調べていくうち、これまで抱いていた図書館のイメージを覆すかもしれないキャラクターの数々と出会うことができた。

またその過程で、図書館が新しいステージに進んでいるということも知ったのである。

 

まずは数多く存在する図書館キャラクターの、ほんの一部をご紹介したいとおもう。

 

 

個性と愛情とほんの少しの狂気が入り混じる図書館キャラクターたち

図書館といえば本!王道愛されパターン

その名のとおり、図書館=本というイメージに忠実な王道パターンである。

 

【ぶくまる/神奈川県平塚市中央図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎ふくろうの男の子。頭の上にあるのは本の形をした帽子だ。

これだ!本をアクセサリーにしているあたり、メガネをかけている理系男子ほどに安心感がある。

 

 

【らぶちゃん/島根県立大学島根県立大学短期大学部松江キャンパス図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎学生さん考案。広辞苑が3冊乗せられる大きな耳がチャームポイント。「~に」「~だに」などの出雲弁を喋る。

衣装のバリエーション含め、方言を駆使するなどかなり萌える設定だ。

広辞苑公式サイトによると、第七版の普通版で約3.3kgあるという。

ふんわりした見た目に反して、10kg近くの重みに耐えられる屈強な耳をしているのだ。

 

 

【図書五郎/慶応義塾女子高等学校】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎本の妖精。5人兄弟の末っ子で、素直になれない性格のため口がへの字になっている。寿司が好きすぎるあまりこのビジュアルである。

自身はシャリで、本がネタということか。しかしネタ=本なので、鮮度はジャンルによって違うし、美味しかったり不味かったりもするのだろうとおもう。

 

 
【としょくん/常磐大学情報メディアセンター】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎職員さんがメモ紙に10分で書き上げた渾身のキャラ。百科事典に乗り移ったつくも神。

とても貴重な妖怪枠。ゆるいビジュアルとは裏腹に、気の遠くなるような長い時を本棚で過ごしていたであろうベテランの風格を物語っている。

10分程度で彼を描きあげたという職員さんは、きっと強大な妖力に取り憑かれていたに違いない。

 

 

【本挟しお太朗/愛知淑徳中学校・高等学校

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎足の長さは自由に変えられるらしい。

ネーミングで、太郎などの「郎」ではなくあえて朗読などの「朗」がチョイスされるのも図書館キャラクターの特徴だ。

スラッとした細長い脚が魅力的なので、着ぐるみ化の際には中に入るひとの脚の形が重要となる。

 

 

本どころではない、インパクト大な特殊形態

パッと見ただけでは図書館のキャラクターとは思えない、それでいて強烈な印象を残すものを挙げてみた。

 

【語朗(かたろう)/大東市立中央図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎山で友達と相撲三昧の生活だったが、自動車図書館で図書館まで遊びに来て居つく。独特なヘアスタイルは、市花の菊。

まわしのデザインは、「おにぎり、大好きなんだな」というセリフが聞こえてきそう。

相撲よりおもしろいものを、図書館で見つけたらしい。通常の河童と同じく、頭には水がかかせないようだ。

 

 

【ランガナたん☆/田原市図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎1892年8月9日、インドに生まれる。くしゃみをするとおっさんになり、あくびをすると女の子になる。

どんな経緯でこのプロフィールが生まれたのだろうか。

考えれば考えるほど悩ましい。

「わからん、なんとか解脱して楽になりたい…はっ、これがもしやインド哲学!?」などと身体をぐねぐねさせていると、GLさんからランガナタンはインドの図書館学の父ですよ」とのご指摘をいただいた。

ランガナータン(或いはランガナタン, Shiyali Ramamrita Ranganathan, சியலி ராமாமிருத ரங்கநாதன்、1892年8月9日 - 1972年9月27日)は、インド数学者図書館学者タミル人図書館学五原則コロン分類法を制定した事で知られ、インド図書館学の父と呼ばれる。(Wikipediaより引用)

 なるほど、かなりちゃんとした設定を持ったキャラクターなのだった。

「図書館学の五原則は、学生の時に呪文のように唱えてました…」とGLさんがぽつり。

すごいぞ。一体なんなんだ。図書館学の五原則。名前だけでものすごいパワーを感じるぞ。

気になる方はぜひ調べてみてほしい。

わたしもちゃんと勉強して、おのれの根性のなさと無知に打ち震えながら、口がカラカラになるまでわたしも唱えたい。

 

 
【落花生/岡崎市立中央図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎魅惑のくびれを持つ落花生。

とてもクールで潔い。落花生。それ以外の情報は必要ない。

名前の読みが「おちはないく」ということ以外には。

 


【本のヒーロー ダクシオン/HEROES' LABO・シン】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎古来より受け継がれし「閃詩の書」を用いて、本好きの青年エイチマモルが本開(変身)した姿。人類を無知・無関心にしようとする悪の組織「インディグノ帝国」から人々を守るため、日夜戦っている。父親から鎧を受け継いだ時から失われている「左胸の1冊」を探すため、全国の図書館・書店などを巡っている。その1冊が見つかれば、真の力が発動されるらしい…。 

 あまりに素晴らしかったので、公式PR文をそのまま引用してしまった。

ちなみに武装図書剣(図書券がデザインされている)図書ガード(盾)、奥義は読み切りらしい。

受けてみたいぞ読み切り。「続きが気になる!続きを聴かせてェェーーッ!」と悶絶しながら岩場で爆発したい。

ちなみにGLさん曰く、とても良い声をしているらしい。 

 

 
【蛾のおっさん/るみづほ妄想図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎学校図書館の教育格差をよくするべく「蛾(が)んばって」いる。

聞いて驚くなかれ、蛾のおっさんだ。情報はそれだけだ。

蝶ではなくあえて蛾であるところにポリシーを感じるし、それゆえの哀愁もある。

自治体によって起こっている学校図書館の教育格差に一石を投じる、至って真剣なキャラクターである。

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図書館総合展ウェブサイトより引用

筆者の地元・佐世保にゆかりのある方が生みの親らしく、わたしはとても誇りに思う。

蛾のおっさん、プッシュしたい。

 

 

手書きのあたたかみ

キャラクターの多くは手書きのテクスチャーを色濃く残している。

その道のプロにデザインを依頼するのはごく稀で、たいていが館内外での公募(職員さんや一般市民の方の手書き)だ。

予算をあまり割くことができないという事情がうかがえるが、そのおかげかなんだか懐かしさすら内包した親しみが感じられるのは気のせいか。

 

 

猫はやはり人気モチーフ

一見、紙と相性が最悪のように見える猫だが、図書館界においても人気のモチーフだ。

ひょっとして猫好きが多いのだろうか。

スラスラっと描きやすいのかもしれないし、賢そうなイメージも採用される理由のひとつだろう。

 

 

【にゃよい/足立区立やよい図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎やよい図書館に住み着いているノラネコ。本が大好きで、頭にかぶった帽子がトレードマーク。

ひたすらかわいい。なまえもいい。

 

 
【きやにゃ、もりし/笠岡市立図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎同市出身の若手漫画家・青戸成さん(『暗殺教室』(松井優征)の公式スピンオフ作品『殺せんせーQ!』の作画担当)によるデザイン。ネーミングは、同市出身の翻訳家・森田思軒(もりた・しけん)さんと小説家・木山捷平(きやましょうへい)さんから。

漫画家先生のデザインとのことで、思わず「おぉ…」とミーハーな声が漏れてしまった。が、肝心の漫画はまだ読んだことがない。すみません。

 

 

【ねこ館長/江戸川大学総合情報図書館】

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図書館総合展ウェブサイトより引用

▶︎はたきを片手にお掃除や書架の間のゴミ拾い、重い本を抱えての配架など、猫にしては働き者。毎月シーズンにあわせたコスプレで図書館ウェブページのトップを飾っている。

「署長」や「駅長」でもおなじみの猫が、館長としても大活躍。

ファッションリーダーとして、いつも同じ衣装に甘んじることのないストイックな一面も素敵だ。

 

ううむ。

ひょっとして、猫キャラは“招き猫”的な意味合いもあるのかと思ったヤマモトです。

 

 

ところで彼らはなにをしているの?

ところで図書館キャラクターは、いったい何をしているのだろうか。

来館者をなごませるため?こども人気獲得のため?いやいやそれだけではない。

簡単にいえば、「広報係」である。

 

図書館が行なっているサービスについて、案内はされているのに見過ごされてしまいあまり認知されていないパターンは結構ある。

例えばレファレンス

館内所蔵の資料を使って、資料や情報を探すお手伝いをするというものだ。

「紅茶について詳しく書かれている本が読みたい」はもちろん、「小さい頃、海軍の宿舎に住んでいたのだけど、その場所が知りたい」といった『探偵ナイトスクープ!』的なご依頼にまで対応してくれる。

●事例詳細はこちら→子供の頃、海軍の宿舎に住んでいた。場所を知りたい。 | レファレンス協同データベース

 

特に古い情報となるとインターネットに載っていなかったりするため、利用する価値は大いにあるのだ。

内容によって時間がかかることもあるが、知りたい情報に辿り着いた喜びは手探りでお宝を探し当てたかのごとく、である。 

 

そんなわけで、これらのキャラクターたちは、そんなサービスや魅力、新着情報などについて、全力でPRを行う役割を担っているのだ。

「利用者の数が増えることも大切ですが、層の広がりも大切。伝えたい人たちに確実に情報を届けるには、守りや待ちではなく、攻めが必要なんです。そこに、みんなが注目してくれるような“相棒”がいてくれたらいいなと思って、キャラクターを作ることを提案しました」

公式キャラクター誕生は、時代を生き抜く1つの手段。

図書館は攻めの時代に突入したのだ。 

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職人気質な図書館スタッフさんが独自に設計して作成したペーパークラフト。閑静な図書館の水面下ではクレイジーな愛情とエネルギーがマグマのようにほとばしっている(佐世保市立図書館公式キャラクター「SABON」)

 

 「図書館キャラクターグランプリ」というものがある

そんななか、海底火山のような図書館関係者たちのパッションがスパーキングする、年に一回の特大イベントがある。
全国の図書館の普及や交流のため、都市計画や行政、教育、出版関係を巻き込んで行われる図書館総合展だ。

このジャンルでは最大規模のトレードショーとなる。

 

www.libraryfair.jp

 

その中の催しの1つに、「図書館キャラクターグランプリ」がある。※リンク先は2019年度のものです

www.libraryfair.jp

 

ゆるキャラだけじゃなく、図書館キャラだって頑張ってるんだぜ!”と、これらのキャラクターたちにフォーカスを当てたこの催しも今回で5回目を終えた。

今年は総勢75チームのキャラクターが出場。会場での投票によって各賞が決まる(Twiterを通じた各キャラクターへの応援も受け付けている)。※2019年度のイベントは終了しています

 

 

記念てぬぐいもある

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図書館総合展ウェブサイトより引用

こうして一堂に並べてみると圧巻だ。

まさに戦国時代ではないか。

エントリーしたキャラに応じて、毎年図柄は変わるそうだ。

【通信販売】図書館総合展公式グッズのご案内 | 図書館総合展

 

 

このように、図書館には本を読む以外の面白さがあるのだ。

ちなみに近年では、コンサートや演劇、落語など、各館独自の個性的なイベントも打ち出されている。

現在は難しいが、ぜひとも足を運んでみて欲しい。新型コロナウイルスの早い収束を願うばかりだ。

 

 

※記事の作成にご協力いただきました、図書館総合展事務局長さま、佐世保市立図書館の司書さん、誠に有難うございました!

 

白米の魔力

わが家にある米は、ジャスミンライスとバスマティライスの2種類だ。

ジャスミンライスタイ米の最高級品。バスマティライスはインディカ米の高級品のひとつと言われている。

なんだかアジアの富裕層のような家だなぁと思うが、主にこれらを食するのはお義母さんである。

われわれ夫婦は白米を食べない。

糖質制限などというストイックな理由ではないのだが、なんとなく持て余してしまうかもというのと、買い物が面倒だというのと、おかずや麺をガッツリ食べたいからというのが主な理由だ。

ちなみに外出先などではカレーライスも食べるし寿司も食べるし、コンビニおにぎりもためらいもなく食べる。

ただ自宅に白米を置かないだけなのだ。

そんな雑な白米観を持っているにも関わらず、「米は毒です」と言い放つ知り合いの僧(体脂肪率3%)の言葉に適当に相槌を打ったりする。

という具合に、適当に白米と接してきたわれわれだが、ついに導入の時がやってきた。

これまで「夫のお弁当」というタスクから、子育てを理由に逃げに逃げまくっていたわたしだが、先日ついに夫のあまりに貧相な昼飯事情を知ることとなった。

車のゴミ袋に捨てられていた菓子パンの袋について聞いてみると、それはほとんどそういうことだったらしく、さすがにそれは申し訳なかったと猛省してしまったわけだ。

そこで夫にお弁当の持参について勧めたところ、「玄米おにぎり」という返事がかえってきた。

そんなわけでわが家に白米がやってきたのである。

厳密に言えば、子の離乳食用に購入して以来だ。

気合を入れておにぎり弁当初日、1合ぶんほどのおにぎりを持たせた。

具材を買うのを忘れたので、冷蔵庫にあったシーチキンマヨネーズとウインナーにした。

肉肉しいから大丈夫だろうと思った。

ついでに冷蔵庫にあった海苔をジップロックに入れて渡した。

自分でパリパリの海苔を巻け、という意味だったのだが、どうやらおにぎりのリーチに届かず持て余してしまったらしい。

ラーメンの具の海苔状態だ。

次回から海苔を使うときはあらかじめ巻いておこうと思った。

 

帰宅前、夫から電話があったのでスーパーで自分が食べたいおにぎりの具材を買ってくるように頼んだ。

あとから聞いたが、初めて彼は自分で食事を準備せず、なおかつ自分の好きなものを食べることができる感動に打ち震えたという。

買ってきたものは「おとなのふりかけ明太子味」「永谷園お茶漬けのもと」「山椒としらすの生ふりかけ」だった。

彼はとても本気だった。

心からわたしのスマンを届けたい。

しかしつい、炊飯器に残っていた米が食べたくなり、おとなのふりかけを一袋こっそり開封して平らげた。

あとで速攻でばれてしまい、わりと本気で謝った。

 

彼からもう少し量が欲しいとコメントをいただいたので、次の日は5合炊いた。

しかしわたしが寝坊してしまった。

夫は昼ごはん用に2合ぶんほどのおにぎりを自分で準備して仕事へ向かった。

30分ほどアゴを動かし続けたので、途中で疲れてしまったという。

ボリュームか噛み過ぎのおかげなのか、見事にお腹がいっぱいになってしまったようで、その日の晩はわたしが作ったキーマカレー2、3口のみで食事を終えた。

「これは良いダイエットになるかも」と夫婦でワキワキしたが、炭水化物量はやや増えてる気もするしどうなのだろう。

それにしても恐るべし、白米の腹持ちパワー。

白米を生活に取り入れはじめた、われわれ夫婦に乞うご期待だ。

 

 

 

 

【日常あれこれ】

https://www.instagram.com/p/B5SlKCZJUcs/

ピントはこんな感じですかねぇ